代表弁護士 井上 昌哉
URL: http://nagoya-shiboujiko.com/ (死亡事故専門サイト)
■交通死亡事故の損害賠償の内容
交通死亡事故の損害賠償の内容は、治療費や葬儀関係費など、被害者が亡くなられたことで直接支出した積極損害、事故に遭わなければ被害者が得られたであろう将来の利益(逸失利益)である消極損害、事故に遭うことで受ける精神的な苦痛に対する慰謝料に分かれます。
ご遺族の苦しみを慰謝し、今後の生活を維持していくためには、適正な賠償額を獲得する必要がありますが、具体的な内容を知りたいというお問い合わせをいただくことが多くあります。
そこで、しまかぜ法律事務所では、年齢・性別・職業など亡くなられた方の属性ごとに請求できる賠償額について具体的に紹介するコラムを連載しております。
交通死亡事故は賠償額が大きくなるため、弁護士の腕次第で、賠償額に数千万円の違いが生じることがあります。豊富な知識と実績を備えたしまかぜ法律事務所のコラムは、ご遺族の方はもちろんのこと、みなさまにとって有益な情報提供ができるものと考えております。
■65歳、男性、会社役員、大卒、一家の大黒柱が死亡した場合の賠償額
2017年3月4日の最新のコラムでは、65歳、男性、会社役員、大卒、一家の大黒柱が交通事故により死亡した場合に請求できる賠償額について紹介しています。
1.治療費
救命治療などに要した治療費を請求できます。
2.葬儀関係費
死亡事故がなくても将来的にはいずれ必要になってくるため、全額ではなく150万円程度が認定されることが多いです。しかし、若年で亡くなられた場合は、はるかに遠い将来に要する葬儀を考慮する必要性が低いため、150万円以上で認定されます。
3.死亡慰謝料
2,800万円ほどで認定されることが多いです。
4.逸失利益
死亡逸失利益とは、交通事故に遭わず生存していれば得ることができたであろう利益のことです。一家の大黒柱の方が亡くなると、残されたご遺族の生活が困窮してしまうことが多くあります。逸失利益は、請求できる賠償額の中でも特に金額が大きくなりますので、適正な算定をする必要があります。
死亡逸失利益は、(1) 基礎収入×(1-(2) 生活費控除率)×(3) 就労可能年数によるライプニッツ係数で算定します。事業所得以外に年金がある場合は、事業所得が得られる期間と年金のみの期間に分類して算定します。
<事業所得が得られる期間>
(1) 基礎収入
会社役員の方は役員報酬を得ていますが、役員報酬には、労務対価部分と利益配当部分の性格があります。会社役員が亡くなった場合は、労務対価部分だけでなく利益配当部分も失うことから、役員報酬全額が基礎収入となりそうですが、多くの裁判例は、労務対価部分のみ基礎収入として認定しています(最判昭43・8・2判時530・35)。
もっとも、小規模会社やサラリーマン役員など、役員報酬の性格が100%労務対価であると認定される場合は、役員報酬全額が基礎収入となります。
たとえば、亡くなられた方が実際に労務を行い、役員報酬が300万円と高額ではなく、従業員が数名と小規模であった場合、役員報酬全額が労務対価であって基礎収入となります。
(2) 生活費控除率
裁判例は、一家の大黒柱の生活費控除率を30~40%で認定することが多いのですが、被扶養者が1人の場合は40%、被扶養者が2人以上の場合は30%で認定する傾向にあるといえます。被扶養者が妻のみである場合は、40%です。
(3) 就労可能年数によるライプニッツ係数
就労可能年数は原則として67歳までの年数です。ただし、67歳までの年数が平均余命の2分の1より短くなる高齢者については、平均余命の2分の1を就労可能年数とします。男性65歳の平均余命は、19.29です(平成26年簡易生命表)。就労可能年数は9年間です。
9年間のライプニッツ係数は、7.1078です。
以上より、事業所得が得られる期間の逸失利益は、(1) 300万円×(1-(2) 0.4)×(3) 7.1078=1279万4040円です。
<年金のみの期間>
(1) 基礎収入
基礎収入の対象となる年金は、被害者側が保険料を拠出していた年金です。国民年金、厚生年金等の老齢年金、障害年金等は逸失利益の対象になります。一方で、遺族年金等、被害者側が保険料を拠出していないものは逸失利益の対象となりません。
基礎収入の対象となる厚生年金等が200万円であれば、基礎収入は200万円です。
(2) 生活費控除率
年金は一般的に少額であって生活費を支払って余りが出るような性格ではないため、年金以外の逸失利益に比べて生活費控除率は高く認定される傾向にあります。多くの裁判例は、生活費控除率を50%と認定しています。
(3) 就労可能年数によるライプニッツ係数
男性65歳の平均余命は、19.29です(平成26年簡易生命表)。算定にあたっては、事業所得が得られる期間の9年間を控除する必要があります。
12.0853(19年間のライプニッツ係数)-7.1078(9年間のライプニッツ係数)=4.9775
以上より、年金のみの期間の逸失利益は、(1) 200万円×(1-(2) 0.5)×(3) 4.9775=497万7500円です。
したがって、逸失利益は、1279万4040円(事業所得が得られる期間)+497万7500円(年金のみの期間)=1777万1540円です。
■過去の連載内容(一例)
・40歳、男性、会社員、大卒、一家の大黒柱が死亡した場合
・40歳、男性、個人事業主、大卒、一家の大黒柱が死亡した場合
・40歳、男性、会社役員、大卒、一家の大黒柱が死亡した場合
・40歳、男性、無職者、高卒、未婚者が死亡した場合
・40歳、女性、主婦が死亡した場合
・60歳、男性、会社員、大卒、一家の大黒柱が死亡した場合
・60歳、男性、個人事業主、大卒、一家の大黒柱が死亡した場合
・60歳、男性、会社役員、大卒、一家の大黒柱が死亡した場合
・60歳、男性、無職者、高卒、未婚者が死亡した場合
・60歳、女性、主婦が死亡した場合
・65歳、男性、会社員、大卒、一家の大黒柱が死亡した場合
・65歳、男性、個人事業主、大卒、一家の大黒柱が死亡した場合
・65歳、男性、会社役員、大卒、一家の大黒柱が死亡した場合
その他、学生、若年労働者の損害賠償額についても、多数掲載しています。
今後も、年齢・性別・職業など亡くなられた方の属性ごとに請求できる損害賠償額についてコラムを掲載する予定です。
■無料出張相談のご案内
しまかぜ法律事務所では、お住まいが遠方のために事務所へお越しいただけない方や精神的ご負担により体調が優れず外出が難しいご遺族のため、愛知・三重・岐阜だけでなく日本全国、無料で、出張相談を実施しています。土日祝日の相談についても、事前にお電話でご予約いただければ対応可能です。
亡くなった方の年齢・性別・職業によって適正な賠償額は大きく異なってくるため、ご遺族のお話をお伺いし、適正な賠償額を獲得できるよう徹底的にサポートさせていただきます。
■事務所概要
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