図1 従業員数別 不正実態(n=322)
図2 業種別 不正実態(n=322)
図3 業種別 不正内容(n=93)
■1.調査背景
昨今、大手企業の組織ぐるみの会計不正や、地方自治体、金融機関における横領・経費の不正使用などの事件が頻繁に報じられています。これにより信用を失い、業績を大きく落とす企業も少なくありません。当社のコールセンターにもまれに社内不正の相談が入ることがありますが、これらは氷山の一角に過ぎず、その陰には数えきれないほどの不正と不正が起こりうる環境があるのではないかと思い、本調査を実施しました。
■2.調査概要
調査期間 :2016年6月1日~2016年8月31日
調査対象 :エフアンドエムクラブ会員企業
※エフアンドエムクラブ会員企業とは、
エフアンドエムから中小企業向け
管理部門援サービスの提供を受けている企業
有効回答数:328社
調査エリア:全国
■3.調査結果
自社の不正実態について、「発覚あり」29%、「恐れあり」21%、「恐れなし」50%という回答結果でした。3割の企業が「発覚あり」と回答したこともそうですが、2社に1社が「恐れなし」と回答したことに驚きを禁じ得ません。「恐れなし」を選んだ理由を聞いたところ、お金周りは信頼できる人物のみに任せているという回答が多くありました。大企業と比べて従業員が少ない上に、入れ替わりも少ないため、経営者の目が細部に届きやすいのは確かですが、いささか危機感が欠けているという印象を受けました。
従業員数別の集計(図1)では、従業員数6~10名の群から従業員数が増えるに従って「発覚あり」の企業が増える傾向が見られました。従業員数が増えると、当然統制は効きにくくなります。成長中の企業は注意が必要です。
<図1 従業員数別 不正実態(n=322)>
https://www.atpress.ne.jp/releases/120754/img_120754_1.jpg
業種別の集計(図2)では、飲食業、小売業で「発覚あり」企業の比率が高い傾向が見て取れました。レジの小口現金、在庫などに触れる機会が多いこと、少額の商品であれば魔が差しやすいことなど、不正が起こりやすい環境があるためと推測できます。
<図2 業種別 不正実態(n=322)>
https://www.atpress.ne.jp/releases/120754/img_120754_2.jpg
「発覚あり」の93社について、不正内容ごとの回答割合を業種別に集計しました(図3)。総計と比べて割合が顕著に高い部分を網掛けで記しています。93件という限られたサンプルのため一概には言えませんが、傾向から見て取れる点をまとめます。「B 在庫や他の資産の窃盗」は、サービス業、卸売業、飲食業で高く、在庫に触れる機会が多いためと考えられます。「C 売上の不正計上」は、小売業、飲食業、不動産業など営業目標やインセンティブ制度の風習がある業種で起こりやすいようです。「F 情報漏えい(故意)」は、サービス業、製造業で高く、退社時の顧客リストの持ち出しなどと推測できます。その他、原因の考察はできていませんが、「D 経費の不正利用」はサービス業、製造業で高く、「E 利益操作」は建設業、卸売業、小売業で高いようです。「G 社外から個人への利益供与」は、サービス業、不動産業で高いという傾向があります。
<図3 業種別 不正内容(n=93)>
https://www.atpress.ne.jp/releases/120754/img_120754_3.jpg
■4.総評
本レポートでは、不正を行う者がいるから不正が起きていると言いたいわけではありません。不正は企業の大小を問わず起きているという事実を知り、不正が起きるのはそれが起こる環境があるからだと捉え、予防策を講じていただくことを目的としています。社内の現金や経費、在庫その他資産の管理を厳格化することや、従業員のモラル、経営意識を高めることが予防策となります。またこれらは、社内の生産性向上にも直結します。
すべきことは多岐にわたるため、自業種で起こりやすい不正内容を踏まえて、対策を進めていただければと思います。