OECD加盟諸国の労働生産性
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1. 日本の長時間労働の実態
今や、日本の長時間労働の解消は、日本社会の公約になっている。というのも、2014年の日本の労働生産性は、OECD加盟34カ国の中で21位である。主要先進7カ国でも、最も低い水準だ。これは、日本の常態化した長時間労働に起因する結果であるといえる。(後略)
2. なぜ「三六協定」ではダメなのか
長時間労働是正のための施策として、多くの人の頭に浮かぶものに「三六協定」があるだろう。労働基準法に定められた1日8時間、週に40時間という労働時間の原則を、労使協定を結ぶことで延長できるというものだ。(中略)
以上のように、三六協定が形骸化している背景には、労働延長時間の設定に直接的な法的拘束力がないこと、そして特別条項があるために実質青天井となっていることがある。加えて、協定による時間制限がわかりにくく実態として守られていないこと、例えば、特別条項に発動の手続き、発動事由などの記載があっても現場には周知・徹底されていない実情がある。それ以前に、「サービス残業」が横行するようにそもそも労働時間の適正な把握が行われない土壌があることも問題である。
これら三六協定を巡る問題を受けて、今、政府の「働き方改革実現会議」では、延長できる労働時間そのものに、法的拘束力をもたせる議論がなされている。
3. 誰でも“モーレツ社員”になれ、“三種の神器”が機能した高度経済成長期
三六協定に見るように、今日に至るまで労働時間の歯止めが弱かったことが、日本の長時間労働が改まらず、ひいては労働生産性が低迷している一因であると考えられるようになった。では、長らくその状況を放置してきた背景には何があるのだろうか。(中略)
当時はアメリカの経営学者ジェームス・C・アベグレンが「日本の経営」を著した時代であり、その裏には日本独特の労使の関係性があった。それが三種の神器と言われる「終身雇用」「年功制」「企業別組合」である。それらはそれこそ、製造業中心の産業構造の下で、円安(固定為替相場制)による輸出競争力に加え、働き盛り、消費盛りの団塊世代が内需を高めていた高度経済成長期だからこそ維持できていた。
4. 経済の成熟化・産業構造の変化に対する人事制度面の対応の遅れ
やがて石油ショックによる原材料コスト高、1985年のプラザ合意による円高という節目が契機となって、企業は、労働者の年功・熟練に応じて賃上げし、一生抱えきるという雇用の仕方に耐えることが困難になった。そして1990年代初頭のバブル崩壊を経て、失われた20年と言われる低成長期に移行し、もう長時間働くことと企業の収益とは直結しなくなっていた。企業は国際競争に勝ち抜く為、そして雇用・人件費の調整弁として「非正規」の採用を増加させた。すなわち、20年よりもっと前に既に三種の神器の前提となる構造の崩壊は始まっていたのだ。(中略)
時代の変化を受けて、一部の大企業を中心に、いわゆる目標管理制度を併用した職能給の導入の動きもあったが、その運用においてはやはり年功的であった。年功制で横並びの賃金を表向きの評価シートに置き換え、結果として同じ評価記号をつけ、同じだけ賃金を上げるという運用がなされていた。つまり、「差をつける」という手が決定的にゆるんでいた。これでは緊張感が出ず、生産性も上がらない。本当はドラスティックに変わるべきタイミングで、日本の雇用は変わりきれなかったのである。
5. 労働条件改善の施策と戦う企業の武器とは
存立基盤を失った三種の神器に換えて新たに日本の発展を導くような雇用制度が、働き方改革では目指されている。目下、賃上げや長時間労働の是正と、労働条件改善が先行している働き方改革に対して、企業は効率的に付加価値を生み出す策を早急に講じなければならない。そこで企業が取り組める具体的手段の一つに「マイナス査定」を取り入れた人事制度が考えられる。(中略)
マイナス査定を取り入れた人事制度改革は、労務コストの削減が目的ではない。そこから働く人の成長を促し、生産性を高め、結果として賃金原資を増やし、そして評価結果との整合性のある賃上げで働く人に還元していく。そんな好循環を回していくための人事制度改革なのだ。(後略)
【あしたのチーム総研とは】
「あしたのチーム総研」とは、人事評価及び、あした(次世代)のHRに関するシンクタンクです。人事評価制度導入企業及び、検討した企業会員からリアルな声を集め、調査し、ユーザーの声を社会に発信する活動などを行う以外に、人事に関わる最新動向や先進事例が学べるセミナーを開催。業界の第一線で活躍する講師の講演会など、人事業務にまつわるトピックを効率的に学べる場を提供いたします。今後は、定期的に当サイトを通じて業界レポートや、調査結果を発表し、また要望のあるクライアント企業様向けに「アンケート調査」「セミナーサービス」「広告サービス」などを提供しています。
このレポートは、株式会社あしたのチームがPR・マーケティングサービスを提供する株式会社ベイニッチ(本社:東京都港区、代表取締役:石川 友夫)の「総研・シンクタンク構築サービス」を活用して、両社共同で、人事評価制度をはじめとする人事業界の発展のために、調査研究及び広報・広告活動を行うことを目的として設立した「あしたのチーム総研」のサービスの一環です。
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