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IEEEメンバー 三次 仁教授が提言 IoTで社会のムダを省く



三次 仁教授


実験に用いる物品管理用QRコード


センサ情報の同時送信機能を持つRFタグのプロトタイプ

IEEE(アイ・トリプル・イー)は、160以上の国々にいる電気/コンピューターサイエンスを主としたエンジニアや科学者等の専門家約400,000人(日本国内には約14,000人)のメンバー数を擁します。各エンジニアや専門家は日々社会に貢献すべく研究活動を続けています。



そのメンバーの1人でInternet of Things(IoT)や無線センサーネットワークを研究する三次 仁先生(慶應義塾大学環境情報学部教授)は、IoTの進展を社会のあらゆるムダを省く仕組み作りに活用するべきだと提言しています。





■社会のムダ 削減の重要性

世の中にはムダがあふれています。三次先生によると、国際貿易が盛んな中、世界では年間15兆円分の物品損失が出ています。海賊版や偽物が出回ることもムダであり損失です。これらで年間30兆円の被害が出ていると言われます。国内の物流、医薬品など細かく分野を分けても、東京港、横浜港ではコンテナ全体の6~7割が空きコンテナです。医薬品では飲み残しの薬、いわゆる残薬により年間500億円が社会保障費のムダになっています。





■個別管理(ユニークID)の徹底でムダを省く

こうしたムダを削減する方策の一つとして、三次先生はバーコードやRFIDタグとビッグデータ管理の活用を挙げています。現在も小売店で売られる商品の多くにはバーコード、QRコードが付いています。これらは共通商品コード、日本ではJANコードが割り振られ、管理されています。本屋で売られる書籍にも国際標準図書番号(ISBN)のコードがあります。こうした管理コードをより深く、より広く活用することがムダを省くことにつながるのです。



三次先生の研究室では、商品や書籍のコードをベースに、誰のものか、どこに置いてあるのか、といった細かい事柄までを管理する個別管理システムを開発・運用しています。普段使わないような書籍やグッズでも、必要になったとき、借りたいとき、パソコンで検索すればどこにあるか分かるのです。これを応用すれば、例えば消防署が保管する発電機などの備品の性能、使用履歴、管理している場所をパソコンで一覧でき、近隣の消防署同士で融通しあったり、メンテナンスの必要な時期がわかったりします。慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスでは、個人の制作物を個別管理することで、ある制作物を展示会に出したいとき、制作物に付いたバーコードをスキャンするだけで、作者のホームページへ行き、簡単に作品に関する情報を得ることができるシステムの実験を始めています。現状は商品データなどベースのデータを取り込みつつ、細かい管理は手作業です。将来的に細かい管理データも自動化できれば、企業・家庭などで多くのムダを省くことができることになります。



※RFIDタグとは、電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み書きするシステム。電波でタグを複数一気にスキャンすることができ、電波が届く範囲であれば、タグが遠くにあっても読み取りが可能で電池を内蔵する必要がない。



<実験に用いる物品管理用QRコード>

https://www.atpress.ne.jp/releases/109081/img_109081_2.jpg





■個別IDの副次的メリット

個別IDは、これまでほしくても取れなかったデータを共有できるようになります。例えば、家電製品のリコールで、部品ごとに付いた個別IDを使い、メーカー側もユーザーも簡単に「どの製品が対象で、誰が所有者でありどこに置いてあるか」を把握できます。確認の手間が省けるのです。



家電メーカーも、買われた家電が果たして使われているのか、どこが故障して捨てられるのか、自社の製品で買い換えてもらえているか、などが分かり、次の製品開発やマーケティングの精度向上につながります。





■個別IDの進展への課題

あらゆるものに個別IDを付けられ、モノとコンピュータが通信できるようになると、ビッグデータ・オープンデータと呼ばれるデータの積極的共有化などを組み合わせて大きくムダを省けるようになります。人工知能(AI)との相性も良さそうです。三次先生は、AIによるデータ解析を活用すれば、在庫や欠品が減少して需要予測の精度向上、在庫ゼロを目指せるようになると説いています。農作物や電子部品など細かいモノについては個別IDでなく、流通するロット単位でIDを付ければ、農家にとっての出荷後だけでなく、農家単位での収穫量や育成履歴などの把握にもつながります。



こうした個別IDの普及には、いくつか課題があります。一つは業界ごとにバラバラになっている管理や商品データを統合していくことです。データを一元管理することは現実的ではないので、個別に管理したデータを後付けで検索・利活用する仕組みが重要です。個別IDを割り振るシステム、割り振ったものの動きに合わせて履歴を簡単に更新するシステムも必要です。システムの構築には手間がかかりそうですが、一度構築すれば多くのムダが省けます。国単位の協力が必要です。



個別IDは膨大になるため、プロトコル作りも重要になります。世界的な枠組み作りと一致団結が必要になるでしょう。商品管理データを持つ企業の協力も不可欠です。





■個別IDとセンサーネットワークの可能性

個別IDの管理は、バーコードなら安価であり、印刷なので多くのものに付けられます。バーコードが不適切なものには、RFIDタグを付けて非接触で管理することになります。RFIDの価格は現状5円程度と言われます。この価格がもっと下がれば、個別IDの普及につながります。



個別IDがあらゆるものに付けられるようになれば、インフラ管理の高度化や廃棄物の有効活用にもつながります。構造物の部材ごとにセンサーや個別IDを付けることで、経年劣化の様子や構造物内部の状況などを把握できるようになります。廃棄物では、製品の成分や素材などが分かり、より細かい分別によるリサイクルも可能です。人体に危険を及ぼす物質を使っているかも事前にわかります。



<センサ情報の同時送信機能を持つRFタグのプロトタイプ>

https://www.atpress.ne.jp/releases/109081/img_109081_3.jpg



三次先生は、企業や自治体、研究者などが集まって個別IDを進めていける仕組み作りを模索しています。





■IEEEについて

IEEEは、世界最大の技術専門家の組織であり、人類に恩恵をもたらす技術の進展に貢献しています。160カ国、40万人以上のエンジニアや技術専門会の会員を擁する非営利団体で、論文誌の発行、国際会議の開催、技術標準化などを行うとともに、諸活動を通じて世界中の工学やその他専門技術職のための信用性の高い「声」として役立っています。



IEEEは、電機・電子工学およびコンピューターサイエンス分野における世界の文献の30%を出版、2,000以上の現行標準を策定し、年間1,300を超える国際会議を開催しています。



詳しくは http://www.ieee.org をご覧ください。
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