「どう装い、何を履くか」は、女性の日常にとって大切な課題だ。これまで、女性に期待される「理想的な装い」とハイヒールは切っても切れない関係だったが負担も大きかった。しかし、その概念が変わる新商品が登場した。
「オシャレは我慢」から「我慢せずオシャレ」が主流に
女性向けのファッションでは、空前のスニーカーブームが続いている。同時にSNS上ではヒール・パンプス強制廃止運動「#KuToo」が巻き起こり、社会問題として認識され始めたのは記憶に新しい。女性にとっての「オシャレは我慢」というセオリーは、もはや過去のものとなりつつある。
このような変化の兆しは、レディースシューズ業界にも押し寄せているようだ。
オーダーメイドパンプスを展開する株式会社キビラ(東京都中央区)が、この秋発売の新作、「ボディバランスシューズ」を発表した。
キビラのパンプスは、デザイン性と履きやすさが特長で「ヒールが高くてもラクに歩ける」との定評を集めている。そのキビラが新たに発売する「ボディバランスシューズ」は、これまでのブランドカラーとは違った角度から、女性の足の悩みへアプローチする。
「ボディバランスシューズ」は、もともと妊娠中の女性が履きやすい靴として販売されていた。しかし、妊婦さん以外にも当初の予想を大幅に上回る売れ行きだったことから、同社の福谷智之社長は高機能シューズへの市場のニーズが高まっていると確信。幅広い年齢層の女性に向けた商品化を決めたという。
靴を履くことで、足元から体のゆがみやO脚改善にアプローチするとできるといい、快適に歩きながら、体のバランスを整えることができる高い機能性を持つ。
「現代人は足が病んでいる」足のバランスが全身にもたらす影響とは?
今回、共同開発をしたのは、長年足にまつわる研究を重ね、これまで10万人もの足を調べてきた桜美林大学の阿久根英昭特任教授だ。
教授が懸念しているのが、現代人に足指が浮き上がりしっかり接地しない「浮き指」の傾向が見られることだと語る。浮き指の大きな原因は、体の重心がかかとに過度に偏っていることだ。これにより、後傾姿勢となって骨盤が傾き、背骨が曲がり、首が前に出る……という体の悪循環も起こりやすくなるという。身だしなみが優先されて足の裏がないがしろにされている状況を踏まえ、「現代人は足が病んでいる」と警鐘を鳴らす。
「ボディバランスシューズ」は、内側に5度傾斜のついたインソールが体の歪みの原因となる足の重心の傾きを正しい位置に誘導し、足の裏から生じる悪循環を防ぐ役割を果たす。
靴にデザイン性だけでなく、履きやすさを求める女性が増える中、「靴を履いて体のバランスを整える」ことを打ち出した同社の動きは、社会の動きを敏感に察知したものだと言えるのではないだろうか。
新作発表会に登場したキビラのブランドアンバサダーを務めるアンミカさんは、「ボディバランスシューズ」を普段から欠かさず愛用していると語る。「良い姿勢で歩くことができるし、行動範囲が広がる。素足でいるよりラク」と履き心地を絶賛。
また、女優でタレントの奈美悦子さんも、ボディバランスシューズを履くと「歩くのが本当に楽しい」と歩く喜びを感じている様子。
ハイヒールを履いた足は、ほっそりと美しく見えるかもしれない。でも、履きたいときに履くものであって、決して強制されるものではない。
靴によって日常の活動が制限される時代は変わりつつある。女性にとって「どの靴を何のために履いて、どこに行くか」という選択肢は、少しずつ広がっているようだ。