
北朝鮮が韓国との軍事境界線(MDL)のすぐ近くに複数の自走砲を配備し、韓国を威嚇している。北朝鮮軍が、韓国側からよく見える最前線に兵器を配備するのは異例だ。MDL周辺では緊張が高まっている。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、金与正(ヨジョン)党総務部長は今月19日、MDL付近への軍備増強を検討すると表明しており、これを受けた動きとみられる。
韓国北西部・金浦(キンポ)市の愛妓峰(エギボン)展望台からは、川を挟んで約1・4キロ先に北朝鮮南西部・開城(ケソン)市郊外の集落が見える。展望台には大手コーヒーチェーン「スターバックス」の店舗があり、「北朝鮮が見えるカフェ」として知られる。
27日午後に訪れると、北朝鮮側の川沿いの茂みに自走砲3門が配備され、砲身は展望台の方角に向けられていた。北朝鮮兵士らが赤い旗を振ったり、周囲を疾走したりする様子が確認できた。銃を取り出して韓国側に構える兵士もいた。自走砲の車体にはハングルで「朝鮮人民の不倶戴天(ふぐたいてん)の敵である米帝侵略者たちを消滅せよ」と書かれていた。
韓国メディアによると、北朝鮮の主力兵器の一つである122ミリ自走砲と形状が似ている。射程距離は20キロ前後とされ、ソウル近郊の京畿道(キョンギド)北部が射程圏に入る。
正恩氏は5月、MDLを「要塞(ようさい)化」する方針を表明。MDL付近では最近、北朝鮮軍が埋設したとみられる地雷の爆発で韓国軍幹部3人が負傷したり、北朝鮮兵士が軍事インフラ建設のため爆発を伴う作業を繰り返したりするなど、緊張が高まっている。今月21日には党軍事委員会で正恩氏に次ぎナンバー2の朴正天(パク・ジョンチョン)副委員長や与正氏らがMDL付近の工事現場を視察していた。【金浦で福岡静哉】
