
山中竹春前市長(54)のパワーハラスメント問題による辞職に伴い、実施が決まった横浜市長選。市役所内のハラスメント対策の行方などが注視される一方、市が抱える政策課題については議論が乏しい現状がある。告示を4日に控え、市の「現在地」を整理した。【神内亜実】
ついに「人口減」の波が
78年ぶりの人口減少――。総務省が9月に発表した2025年の国勢調査で、市の人口は375万952人(確定値)と20年の前回調査から2万6539人減った。全国の多くの自治体と同様に、人口減の波がついに押し寄せた格好だ。
背景には少子高齢化により死者数が出生者数を上回る「自然減」がある。市の調査によると、25年の自然減は1万8732人。転入者数から転出者数を引いた「社会増」は1万8615人にとどまった。
山中氏の実績と課題
こうした概況を背景に、山中氏は21年以降の任期で、他自治体よりも遅れが目立った子育て施策を軌道に乗せた。18歳までの医療費無償化、出産費用の市独自助成などを実現。ただ、今年4月に始まったランチボックスを各学校に届ける方式での「全員給食」は、異物混入や配膳ミスなどのトラブルが相次いでいる。
公共交通の維持も課題だ。利用者の減少が見込まれるうえ、人件費や燃料費も上昇している。市営バスは収支が悪化し、25年度の路線別収支は約35億8000万円のマイナスで、全体の85%にあたる119路線が赤字となっている。来年1月に運賃を20円値上げする予定だが、それでも30年度には国が再建計画の提出を義務づける「経営健全化団体」となる見通しだ。
また、単身世帯の増加などを背景に、防犯対策として宅配ボックス設置費の補助事業にも着手。しかし市議会では予算化を巡る経緯の不透明性なども指摘されている。
厳しい財政
肝心の「財布」はどうか。横浜市の一般会計は26年度当初予算案で2兆993億円と過去最大の予算規模になった。一方で、市が25年に更新した長期財政推計によると、約40年後(65年度)には約1600億円の収支不足になる試算で、厳しい未来を示している。市税収入が減少するためだ。
市の担当者は「歳出をまかなうほどに歳入は伸びない」と説明する。すでに土地の売却や基金の取り崩しなどの臨時財源で補う状況が生じている。22年に策定した「財政ビジョン」に沿い、事業内容の見直しなどを進めて臨時財源の活用額の圧縮にも努めている。
ただ、市税収入として注目を集める個人版ふるさと納税は、市民が他自治体に納税する「市外流出」が続く。26年度の税収影響額は373億円が見込まれている。
花博の成否も鍵
来年3月には横浜市で「国際園芸博覧会」(花博)が開催される。旧上瀬谷通信施設の広大な敷地を利用し、跡地の開発まで見込んだ巨大なプロジェクトとなる。開幕まで半年を切って準備が加速する中、成功できるかも市政の大きなポイントだ。市長選の候補者が横浜の未来像をどう描くのか、注目されている。
