
加齢に伴って骨格筋の量や筋力が低下する病気「サルコペニア」の原因に、疲労物質として知られる乳酸が関与していたと、国立長寿医療研究センターなどのチームが発表した。乳酸を処理する肝臓の機能低下が背景にあるという。従来の治療は運動や食事指導による対症療法が中心だったが、今回の発見は根本的な治療薬の開発につながる可能性がある。
サルコペニア国内患者数は推計500万人
サルコペニアの国内患者数は約500万人と推計される。要介護に至るケースもあり、超高齢社会の日本で対策が急務となっている。しかし、発症の仕組みはよく分かっていなかった。
チームが高齢マウスの筋肉を調べたところ、骨格筋細胞に乳酸が異常に蓄積していることが判明した。また、サルコペニア患者でも同様の現象が起きている可能性が海外のデータベース解析から得られた。
そこで、乳酸から筋肉のエネルギーに使われるグルコースに変換する肝臓に着目。その結果、高齢マウスでは肝臓の乳酸処理能力が低下するにつれて骨格筋に乳酸が蓄積し、複数の段階を経て最終的に筋力が落ちていくことを発見した。
さらに、乳酸の処理能力を高める物質を高齢マウスに投与したところ、筋力の低下が緩和されることを確認した。この物質は腎性貧血の改善薬として実際に使われているという。
同センターの伊藤尚基プロジェクトリーダー(筋生理学)は「高齢マウスと同様の現象が人でも起きている可能性は高い。すでに治療に使われている薬という利点を生かし、実際の治療に結び付けられるよう研究を進めていきたい。筋肉以外の組織に目を向けたことが発見につながった」と話している。
成果は4日付の米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に掲載された。【田中泰義】
