
是枝裕和監督の新作映画「ルックバック」が11日に公開されるのを前に8月31日、撮影場所にもなった山形市の東北芸術工科大学で是枝さんを招いたトークイベントがあった。原作は秋田県にかほ市出身で同大の卒業生でもある漫画家、藤本タツキさんの作品。是枝さんは新作について主な撮影地となったにかほ市の「豊かな四季が撮れた」と語った。
「ルックバック」は2021年にウェブサイト「少年ジャンプ+(プラス)」に公開されて反響を呼び、紙の単行本漫画としても発行された。24年には劇場アニメ化されて日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞を受賞した。
ともに情熱を持って漫画作りに取り組む同い年の女性2人が主人公。同じ小学校から大人に成長していく様子を描く。
是枝さん、気になり一気読み
是枝さんは書店で平積みにされていた「ルックバック」の表紙が気になり購入して一気に読み、同じ作り手としての覚悟が伝わり感動したという。映画プロデューサーにも薦められて実写映画にすることになった。2日から開催されるベネチア国際映画祭にも出品される。
2人が10代を過ごすにかほ市は秋田県南西部にあり、山形県に接する。是枝さんは豊かな山や海、田園が広がるにかほ市の自然のシーンについて「ここだけはぜいたくに時間をかけて撮影させてほしい」と主張し「認められた」と振り返った。25年に冬、春、夏、秋と撮影して一旦クランクアップしたものの、「赤く色づいている山を撮りたい」と申し出て了承され、さらに紅葉のシーンなどを加えたという。
原作になかった部分も「たまたま撮影」
原作になかった部分として、冬季ににかほ市に飛来するハクチョウを描いたシーンがある。たまたま撮影できたものだが「藤本さんもこのハクチョウを見たはずだ」と思い、シーンを残すためにハクチョウのエピソードを挿入したと明かした。
藤本さんには試写会で映画をみてもらった。ハクチョウの他にも「いろいろ心配したところはあった」というが、「素晴らしく褒めていただいて良かった」と明かした。
是枝さんは他にこだわった点として絵を描くシーンを挙げた。紙に向かって手を動かす音を繰り返し録音したといい、「ここで勝負しようと思った」。
トークイベントは同大の中山ダイスケ学長が司会し、参加した約200人の学生からの質問も受け付けた。映像を学んでいる3年生の「どうすればうまく作品ができるか」の質問に是枝さんは「やりたいことを説明し、他人の意見に耳を傾けるコミュニケーション能力を磨く必要がある」と答えていた。【岩崎誠】
