
原油輸送の要衝であるホルムズ海峡を巡って、米国とイランの緊張が再び高まっている。米中央軍は7日、イランによる商船攻撃への対抗措置としてイランを攻撃し、攻撃の応酬となった。トランプ米大統領は8日、戦闘終結に向けた覚書について「終わったと思う」と述べるに至った。「出口」が見えないまま、最終合意に向けた交渉の継続が危ぶまれている。
イラン、今後も譲歩しない可能性
米軍は6月下旬にも、イランが貨物船を攻撃したとしてイランを攻撃した。この時はイランが再びタンカーを攻撃するなど応酬に発展したが、双方は攻撃の停止で合意。仲介国の中東カタールで間接協議を実施し、ホルムズ海峡を巡る対応などを話し合った。
米ニュースサイト「アクシオス」によると、米側はこの協議で、イラン側に「より大きな視点」で考えるよう促した。イランはホルムズ海峡を通航する船舶から料金を徴収する構えだが、米側が覚書に基づいて対イラン制裁を解除した場合、イランはより多くの利益を得られると伝えたという。
一方で、イランは海峡の管理を巡る問題を金銭ではなく、「主権」の問題として捉えている可能性がある。経済苦境に直面するイランにとって米側との交渉で制裁解除などの経済的利益を得ることは重要だが、海峡管理に関しては今後も譲歩しない可能性がある。通航する船舶はイラン当局と調整することのほか、ルートに関しても「オマーン側」ではなく「イラン側」を航行するよう主張している。
そもそもイランは、米とイスラエルが2月末に始めた今回の軍事作戦で、最高指導者だったアリ・ハメネイ師ら要人を多数殺害されるなどしたにもかかわらずイスラム体制を維持した。ホルムズ海峡の「封鎖」という作戦前にはなかった切り札も手にした。自国が米側よりも優位な立場にあると認識している模様で、米側に譲歩を迫っている。
トランプ氏が珍しく吐露した懸念
イランが強硬な姿勢を崩さない中、事態打開の有効な手立てを見いだせていないのが米側だ。トランプ氏が6月に署名したイランとの戦闘終結に関する覚書は、イランの原油輸出を一時的に許可する一方で、核を巡る協議は先送りするなどイラン側に相当に譲歩した内容だった。
トランプ氏は普段は強気な発言で知られるが、覚書の署名後には「私が見たくなかったのは経済的な大惨事だ。もし、このまま(戦闘を)続けていたらそうなっていたかもしれない」と珍しく懸念を吐露。海峡の封鎖に伴う経済的な大混乱を収束させることが、覚書に署名した動機だったと明かしていた。
容易ではない歩み寄り
トランプ氏は既に国内でイラン側に譲歩したとの批判に直面しており、ホルムズ海峡に関してさらに歩み寄るのは容易ではない。同時に、11月に中間選挙を控える中、経済混乱の一層の悪化や戦闘の泥沼化につながるリスクがある本格的な攻撃再開は避けたいのが本音とみられ、難しい状況に追い込まれている。
アクシオスによると、米軍による7日の攻撃の標的には、イランの防空システムのほか、沿岸の監視システム、ミサイルやドローン発射拠点が含まれる。6月下旬にイランを空爆した際と比べて4~5倍の規模や威力だったといい、イランに対して米側は譲歩しないとの強いメッセージを伝える意図があったとみられる。
トランプ氏は8日、戦闘終結に関する覚書に基づく停戦の失効について言及する一方、イランとの交渉継続は認める意向も示した。
ただ、イラン産原油の輸出許可は、イランにとって米側との交渉の席に着く事実上の「見返り」でもあった。制裁緩和の撤回にイランが反発するのは必至で、交渉の先行きは見通せない。【ワシントン松井聡】
