
中東情勢の悪化により、原油の輸入を中東に依存し過ぎていることへの危機感が高まっている。政府内では調達先の多角化をすべきか議論されているが、石油元売り大手「出光興産」の酒井則明社長は「簡単な話ではない」「エネルギー安全保障の確立や安定調達には、相応のコストがかかる」と話す。
日本が輸入していた原油は中東への依存度が高く、2020年度から23年度現在まで9割を超えている。そのほとんどはホルムズ海峡を通っていた。
ホルムズ海峡が事実上、封鎖されてからは、海峡を回避して届けられた中東産のほか、米国産や備蓄の放出などでしのいできた。今ではオーストラリア産やアゼルバイジャン産も輸入されている。
ただ、ここでネックになるのが、原油は産地によって重さや硫黄分が違うことだ。原油の精製には、性質に合わせた対応が必要になる。
国内の製油所は、中東産の仕様になっている。酒井氏は「全く違う産地の原油をそのまま精製するのは難しい」と説明する。
このため、各地の原油を混ぜて、できるだけ中東産を処理していた時と同じような性質に近づけているという。
それでも「米国産などの性質に合わせて精製できるよう、製油所の装置に投資が必要」と考えている。
また、調達先を多角化するとしても、酒井氏は簡単にはできないとみている。
日本が中東の産油国と長年かけて築いてきたように、輸入する相手国と良好な関係をしっかり作らなければ、安定的な調達の保障は得られないからだ。
酒井氏は「新しい国と関係を作るにはどうしても時間がかかる。いきなり『ドン』と中東依存度を下げるのは現実的ではない」と語った。【山口智】
