
職業はパティシエ、ゴルフは高校時代にプロ入りを目指したほどの腕前――。
スピードスケート・ショートトラック女子の長森遥南(はるな)選手(23)=アンリ・シャルパンティエ=は複数の顔を持つアスリートだ。
スケート以外を一時「封印」して6日(日本時間7日)に開幕するミラノ・コルティナ冬季オリンピックへの切符を手にした。
最終選考で逆転代表入り
劇的な選出だった。
2025年12月、五輪代表最終選考会を兼ねた全日本選手権で、500メートル、1000メートル、1500メートルの3冠に輝いた。
特に2日目の1000メートルは後半から巻き返し、先頭に躍り出た。
長森選手は今年度の強化指定選手ではなく、勝算があったわけではない。
そんな中で、無我夢中でゴールを目指した。
「ガッツポーズを忘れるくらい結構必死に滑った」と明かす。
女子はワールドツアーで五輪代表の5枠を獲得し、3枠は内定選手が発表済みだった。
「今大会で大きな成長がみられた。勢いをもって臨めるのはチームにとってもいい」(河合季信強化部長)と残り2枠の一つに抜てきされた。
「この場に立っている実感がなくて、うれしい気持ちと、もう本当にいろんなたくさん思いがある」
表彰式後、五輪代表に選ばれた選手の名前が読み上げられ、リンクに上がった長森選手は感極まった様子で話した。
「浅田真央選手のように」が…
スケートを始めたのは小学2年の時だ。
母親が「浅田真央選手のようになってほしい」と神戸市内のスケート教室に通わせたが、コーチの専門はスピードスケートだった。才能を見いだされ、本格的に競技を始めた。
ほぼ同じ時期にゴルフもスタートした。
高校生でプロテストを受験するほどで「結構ガチ」だったといい、関西学院大時代は体育会ゴルフ部に試合の時だけ助っ人を頼まれることもあった。
入社1年目のパティシエ
スケートリンクで幼い子供たちと接する楽しさを知り、小学校の教員を目指して勉強した。
大学卒業時にスケート引退を考えたものの、ブランド「アンリ・シャルパンティエ」で知られる洋菓子製造のシュゼット(兵庫県西宮市)から話があり、続行を決めた。
オフシーズンは抹茶味やイチゴ味の小さいフィナンシェの製造を担当する。
現在入社1年目で「やっと任せてもらえるようになった」。自身は洋菓子だけでなく和菓子も好きで、全日本で2冠を達成した1日目の夜はなかなか寝付けず、未明におはぎを食べた。
そのことを「本当はダメなんですけど……」と前置きしつつ、笑顔で明かす朗らかな一面もある。
昨年のワールドツアーのリレーは別のメンバーが参加しており、代表に決まって顔合わせから始めた。
限られた時間で技術面の精度を上げなければならず、代表合宿では「頭が疲れた」とも漏らしていたという。
しかし、エースの中島未莉(みれい)選手(22)は「すごくうまく切り返しができるタイプなので、タッチのタイミングやスピード感が合えば大丈夫だと思う」と評する。
スケートに集中するため大好きなゴルフは休んでいるが「集中し終わったらまたやりたい」と語る。
多才なスケーターは貪欲だ。【ミラノ椋田佳代】
