
大井川鉄道(本社・静岡県島田市)は、2022年9月の台風15号で甚大な被害を受け不通になっている区間で今月から復旧工事を開始した。29年春の全線開通に向けて南側から段階的に開通させていく計画で、工事が順調に進めば、27年秋ごろに川根温泉笹間渡―地名(じな)間(2・9キロ)の1駅分が延びることになる。
不通になっているのは、大井川本線(金谷―千頭間、39・5キロ)の北半分の川根温泉笹間渡―千頭間(19・5キロ)。復旧工事は今月4日、川根温泉笹間渡駅から約1キロの地点にある、斜面から崩れ落ちた土砂が線路を覆った地点で始まり、18日に報道陣に公開された。
現場は大井川がS字状に屈曲して流れる山間地で、道路は通じていない。線路を走れる車輪が付いたトラックのような作業車「軌陸車」で向かった。斜面から崩れ落ちた約300立方メートルのうち約3分の1が既に重機で取り除かれ、この日は線路脇の斜面の沢筋に不安定なまま残っている大きな石を作業員らが割ったり、下に降ろしたりしていた。
今後は線路の下に水路を整備して、沢の水がスムーズに流れるようにすることが重要だという。地名駅までには三つのトンネルがあり、「建設から約100年経過しているので、壁面の補修も必要」(同社)という。
地名駅以北は、28年秋ごろに下泉駅まで4・5キロを延伸して運行再開。その先には、線路の下の地盤が流出して難工事が予想される区間もある。不通区間全体で約3000立方メートルある土砂を取り除き、レールや枕木なども整備したうえで29年春の全線開通を目指す。
全線での運行再開に必要な費用約21億円のうち、国の補助金などを除いて同社が負担すべき約8億円については、県と沿線の島田市、川根本町が支援する。厳しい経営が続く同社の「再生請負人」として昨年6月に就任した鳥塚亮社長は、初めて立ち会った復旧工事の現場で「前進への第一歩だ。『全線開通したら来る』と言ってくださる人が多いが、それでは会社が持たない。その前に乗って応援してほしい」と話した。【丹野恒一】
