
安倍晋三元首相(当時67歳)が奈良市で2022年7月、参院選の応援演説中に銃撃され死亡した事件で、殺人罪などに問われた山上徹也被告(45)に対し、検察側は18日、奈良地裁(田中伸一裁判長)で開かれた公判で無期懲役を求刑した。「暴力は許されず、被告の不遇な生い立ちは被害者に関係ない」と述べた。
検察側は論告で「公共の場で銃を発射した危険性の大きさに着目して刑を決めるべきだ」と主張。選挙演説中の首相経験者が殺害された点を強調し、「戦後史の前例を見ない結果で極めて重大だ」と訴えた。
事件の1年半前から銃と火薬を完成させていたとし、「計画性は年単位と極めて高い。試射を繰り返し、性能を上げて殺傷能力があったのは明らかだ」と述べた。
そのうえで、被告は母親の信仰で恨みを募らせていた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)にダメージを与えようと考え、教団と関係があると捉えていた安倍氏の銃撃を決意したと強調。銃の製造で借金を重ね、事件直前に仕事を辞めたこともあり、経済的に行き詰まっていたとも指摘した。
これまでの裁判では、被告の生い立ちが明らかにされた。被告の母親は約1億円の献金をした末に自己破産した。被告は大学進学を断念して職を転々とする生活を送っていた。
こうした生い立ちについて検察側は「不遇さは否定はしないが、善悪を判断できる40代の社会人だ」と指摘。「生い立ちは被害者に無関係で、被告の情状に大きな影響を与えるべきではない」と主張した。
被告はこれまでの被告人質問で「教団に打撃を与えるのが自分の人生の意味と思った」とし、教団幹部を襲撃できれば安倍氏を標的にすることはなかったと述べた。「安倍元首相のご家族には何の恨みもありません。安倍元首相が殺害されなければならなかったのは間違いだった」と謝罪した。【田辺泰裕、木谷郁佳、岩崎歩、林みづき】
