
インドネシア政府は10日、32年に渡り独裁政権を続けた故スハルト元大統領に、国家の名誉称号「英雄」を授与した。人権侵害の歴史を隠蔽(いんぺい)する動きだとして、人権団体などからは、強い反発の声が上がっている。
「開発独裁」と言われたスハルト政権下では、経済成長を進める一方、言論の自由を抑圧。共産党員を激しく弾圧し、少なくとも約50万人が殺害されたとされる。縁故主義や汚職も横行し、1998年には反政府デモをきっかけに広がった大規模な暴動を受け、政権は崩壊した。
スハルト氏は2010年と15年にも英雄候補となったが、称号を逃してきた。
だが、昨年10月に就任したプラボウォ大統領は、スハルト氏の元娘婿で、軍の最高幹部として独裁政権を支えた経歴を持つ。過去の選挙戦でも、同氏の英雄選定を明言していた。
現地メディアによると、スハルト政権下の強制失踪や虐殺を追及してきた人権NGOは、複数の重大な人権侵害に責任があるとして、称号は「不適切だ」と批判。インドネシア法律扶助協会も10日、「法的にも人権的にも矛盾する」とし、授与を非難する声明を発表した。
政府は現在、歴史教科書の改訂作業も進めており、スハルト政権を肯定的に再評価する可能性があるとして、国内では懸念が広がっている。
英雄称号は、国の独立や発展に貢献した故人に毎年授与され、今年はスハルト氏のほか、故ワヒド元大統領ら計10人が選ばれた。【バンコク国本愛】
