
敗戦後に中国の港から日本へ引き揚げる人々の姿を、中国人画家の王希奇(ワンシーチー)さん(65)が縦3メートル、横20メートルにわたって描いた巨大絵画が6日から福岡市博多区の福岡アジア美術館で始まる「王希奇『一九四六』福岡展」で展示される。戦後、福岡市の博多港には約139万人の引き揚げ者が着いた。王さんは福岡での初めての展示に「絵に描いた人々を古里に連れてきたような感じがする。うれしい」と話す。11日まで。
巨大絵画「一九四六」は、日本の敗戦で旧満州(現中国東北部)を追われた人々が1946年、中国遼寧省の港・葫蘆島(ころとう)で引き揚げ船への乗船を待つ情景を油絵で描く。当時の写真資料などに基づき、構想から5年をかけて2015年に完成させた。絵の中央付近には、侵攻したソ連兵による暴行を逃れるためか、髪を短く刈った少女が遺骨の入った箱を抱える様子が浮き上がるように描かれる。
王さんは葫蘆島に近い錦州市出身。幼い頃に祖父から、46年当時の日本人避難者の状況を聞いたこともあり、「敵、味方という立場を超えて戦争の被害を考えたい」と制作を決意した。日本での展示は9回目。福岡展は市民でつくる実行委員会が主催し、中国東北部に残る旧満州国当時の建物を描いた作品など計約20点を展示する。
同館8階交流ギャラリーで。入場料1000円。6日午後2時から王さんの講演、7日午後2時から引き揚げ経験者3人が体験を語る会がある。いずれも先着100人。【遠藤孝康】
