
メタンガス検知、通信障害、酷暑、脆弱(ぜいじゃく)な交通手段――。4月に開幕した万博は相次ぐトラブルに見舞われながらも184日間を完走した。
閉幕日の13日も早朝から来場者が長蛇の列を作った。徹夜して開場を待った兵庫県三田市の森本満里奈さん(29)は「世界中の人たちと交流したり、世界中の食べ物を食べたりできたことが万博の魅力。一生忘れない思い出になった」と語った。
閉幕日ならではの光景もみられた。複数の国が共同入居するパビリオン「コモンズ館」ではスタッフらがガラス張りの壁一面に感謝の言葉をつづった。人気が爆発した公式キャラクター「ミャクミャク」に着想を得たイラストも描かれていた。「多くの人に出会って視野が広がり、人生で挑戦しようと思うことが増えた。人とのつながり、絆の大切さを実感した」。清掃員の安田優花子さん(33)は万博での出会いと別れをかみしめた。
象徴として存在感を放った大屋根「リング」。雨天時の雨よけに、炎天下では熱中症対策にも一役買った。名古屋市の会社役員、徳美文悟さん(65)は「人がたくさん乗っても耐えられる木はすごい。1970年の大阪万博のシンボル『太陽の塔』のように一部が残ればいい」と話した。
そして夜。会場では花火が打ち上げられ、ドローンショーで夜空に現れたミャクミャクが「184日間本当にありがとう。またどこかで会えるといいな」と呼び掛けた。来場者の一人は「さみしいの一言に尽きる。切ない」と漏らした。
東ゲートや西ゲート付近では帰宅する来場者をボランティアスタッフらが見送った。「ありがとうございました」と互いに声を掛け合い、ハイタッチする子どもや涙をこらえながら歩く人の姿もみられた。「多様でありながら、ひとつ」というメッセージを発信してきた万博は午後10時、幕を閉じた。【安西李姫、砂押健太、根本佳奈】
