
公明党が10日、自民党との連立政権からの離脱を表明し、26年続いた「蜜月」が終わりを迎えた。両党の選挙協力も白紙となり、今後の国政選や地方選はどうなるのか。地方議会への影響は? 公明が「常勝関西」と呼ばれる強固な支持基盤を築いた関西でも、動揺と困惑が広がった。
くすぶり続けた「政治とカネ」
「離脱もあり得ると頭の体操はしていたが、正直、驚きだ」。公明のある大阪府議は衝撃のあまり、言葉少なだった。
2024年の前回衆院選で、公明は大阪と兵庫の6小選挙区のうち、大阪の4選挙区で議席を失った。
「大阪都構想」を巡って協力関係にあった日本維新の会が対抗馬を立てたためだが、自民派閥の裏金事件のあおりも受けた。「政治とカネ」はくすぶり続け、公明は今夏の参院選でも苦戦。支持母体・創価学会員の高齢化も相まって、支持者離れに拍車が掛かった。
ニュース速報で「連立離脱」が伝わると、府議団の藤村昌隆幹事長は関係者と慌ただしく連絡を取り合い、情報収集に追われた。
藤村氏は「私たちもまだ説明を受けていない。自公間でどういう話し合いがあったのか、まずは確認したい」と困惑気味。今後について、「国政ではこういうことになったが、府内では自公が一緒に政策勉強会を開くなど人間関係を築いてきている」と述べるにとどめた。
「公明の支援なしに勝てるかどうか…」
一方の自民。ある府連関係者は「(創価)学会票を当てにしていた衆院小選挙区の支部長らは戦々恐々だろう。これを機に、公明に明け渡してきた選挙区を取り戻したいと思う者もいるかもしれないが、公明の支援なしに勝てるかどうかは別の話だ」と語った。
衆院小選挙区の支部長を務める元衆院議員は「一寸先は闇やな」とぽつり。1日に公明の斉藤鉄夫代表から「自公でしっかり連携していきましょう」と声を掛けられたといい、「この間に何があったのか。選挙は自民にとっても、公明にとっても厳しくなる」と弱々しかった。
維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は10日夕、民放番組に生出演。放送中に飛び込んできた一報に、「基本的な考え方が違う政党が選挙のためだけにくっついているのは必ずしも良いことではない。非常に重たい決断だが、分かりやすくなった」と評価した。その上で、「いよいよ本格的に多党化の時代に入った。野党の責任も非常に大切になってくる」と述べた。
自民から維新に移ったベテラン府議は「自民が本気で保守層を取りに来たなと覚悟を感じた」と受け止める。「維新をはじめ、保守系の政党は自民に票を奪われかねない。衆院解散となれば、我々にとってもガチンコの厳しい戦いになる」と気を引き締めた。
隣の兵庫県では、衆参両選挙で自民と公明が協力して議席を確保してきた。
「あまりに一方的な判断」
公明は前回衆院選でも自民との協力で兵庫2、8区を維新から守り切った。参院選兵庫選挙区では改選数が3となった16年から公明候補が自民の推薦を得て議席を維持している。
ただ、自民県連内には、公明に支持基盤を削られることへの懸念もあり、2、8区への擁立論がくすぶってきた。
「あまりに一方的な判断で驚いた」。公明の連立離脱方針に、自民県連の黒川治幹事長は首をかしげる。「万が一、2、8区に自民と公明の候補が両方立つことになれば、維新を利するだけだ」と戸惑いを隠さない。
公明県本部の谷井勲幹事長は「政治とカネは一番大きな問題で、譲れなかったということだろう」と党の方針を理解。「26年も一緒にやってきた。築いてきたものを急に全部なくすというのは考えにくい」と今後も一定の協力関係が続くことを期待した。【長沼辰哉、鈴木拓也、高良駿輔、山田麻未、稲生陽】
