
男性は橋の欄干に足をかけようとしていた。「あかん、あかんて、死んだら」。8月上旬、大阪市平野区の橋から飛び降りようとしていた男性が通行人らに救助された。男性の命を救ったのは、偶然通りかかった会社員と高校生ら4人の連係プレーだった。【露木陽介】
大阪府松原市の会社員、中崎正太郎さん(49)は1日朝、いつものように出勤のため大和川にかかる府道の高野大橋(全長約200メートル)を自転車で渡っていた。
すると橋の東端にある歩道で、川を見つめる上下スエット姿の30代くらいの男性がいた。
気にも留めず横を走り抜けようとした時だった。突然その男性が靴を脱ぎ、橋の欄干に足をかけ始めた。
「何してん!」。中崎さんは慌てて自転車を降りて男性をつかんで欄干から降ろした。男性は「死にたいです」と、か細い声でうつむいて黙ってしまった。
中崎さんはすぐに110番をして、警察の応援を待った。ただ男性は不安定な様子で、予断を許さない状況が続いた。
その時、バレーボール部の練習に向かっていた府立東住吉総合高2年の前島海人さん(17)が横を通りかかった。
大人2人がつかみ合っている様子を見て声をかけると、「飛び降りようとしている」と言われ、すぐに加勢した。
男性は一度は落ち着いたかに見えたが、また欄干に足をかけようとするなどして2人で制止した。
そんな時、前島さんの部活の先輩でともに同高3年の高野健志さん(17)と片岡怜さん(18)も自転車で通りかかった。
前島さんの声かけで2人もすぐに加わり、男性が危険な行為に走らないよう4人で目を光らせた。
まもなく警察が到着して男性を無事に引き渡すことができた。男性にけがはなかった。
後日、中崎さんら4人は平野署から「人命救助に大きく貢献した」として感謝状が贈られた。
中崎さんは「1人ではとても対応できなかった。若い力が加わってくれてありがたかった」と振り返った。
前島さんらが所属するバレーボール部の浜田豊監督は「まじめで、見て見ぬふりはできない人間」と3人を評する。
普段からレシーブやトスなどで連係プレーはお手の物だ。高校生3人は「人の役に立つことができて良かった。達成感があった」と笑顔を見せた。
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