
福島県田村市は、県内初の自動運転バス導入計画を白紙に戻す。実証実験を2023年度に開始し、市民らの反応も良好だったが、費用対効果などの面で時期尚早と判断。今年度に予定していた実験費1億5000万円分を減額した補正予算案を5日開会の市議会9月定例会に提出した。来年度以降の見通しも立っていない。【根本太一】
自動運転バスは、運転手がおらず、前後左右に備え付けたセンサーで歩行者や対向車を感知し、GPS(全地球測位システム)の位置情報を基に走行する。市によると、22年11月に福島市で97歳の男性が運転する乗用車が5人を死傷させた交通事故が計画の発端だったという。田村市内でも高齢ドライバーは多い。一方で、民間のバス路線は縮減されていく。危機感から、市は他県の先進自治体を視察した。
「市内で走ってほしい」96%
実証実験は23年、雪や路面凍結の影響を検証しようと12月に実施された。フランス製の10人乗り電動バスが、県立船引高校や商業施設、医療クリニックとJR船引駅などを結び、1日8往復、14日間で計630人が利用した。次いで24年は9月の13日間で、エストニア製の車両2台に計528人が試乗した。降車後のアンケートには96%が「市内で走ってほしい」と回答した。
実験にかかった費用の計8000万円は国から全額補助された。運転支援員(オペレーター)が同乗しながら一部操作をシステムが担い、市によると、降雪時間帯やシステム障害があった便を除き、ほぼ自動で走行した。
維持費が年間8000万円
導入に前向きな感触を得た市は、実証実験エリアや日数、便数の拡大を念頭に、今年度予算に1億5000万円を計上した。しかし、その後、今年度から国の補助率が8割に減らされたと知る。
また、車両の購入代金は両国製とも約1億円で、さらに年間の維持・管理・運行費用も8000万円ほど要することが試算で判明。白石高司市長は記者会見で「費用対効果が市の求めるレベルに見合わない。自動運転バスの導入は見送る」と述べた。
市担当課「断念ではない」
ただ、担当する市の企画調整課は「一旦は白紙に戻すが、断念してはいない」と言う。人口減と高齢化が同時進行する中で、民間のバス会社とタクシー、JR東日本と連携し合える公営交通インフラ整備は地方の重要課題との考えだ。
市内では現在、国道288号バイパス工事と新市民病院の建設が進んでおり、完成後は交通の流れが変わることも見込まれる。担当者は「国産メーカーの車両価格も見極め、その時に実証実験を再開する選択肢は残しておきたい」と話す。
