
福岡県大刀洗町で昨年12月、議会に調査特別委員会(百条委員会)が設置されて8カ月余り。調査の主眼が「旅費不正支出」から「大刀洗マルシェかてて」の設置根拠や経理問題に移り、8月に中山哲志町長が「百条委の運営に疑義があり、それも対象に調査する第三者委員会を作る」と表明して、両者の対立が先鋭化している。議会と町長は共に直接選挙で選ばれ「二元代表制」と言われる地方自治の両輪。専門家の神奈川大学・幸田雅治教授に地方自治の観点で、大刀洗町の事態を解説してもらった。【聞き手・前田博之】
--町長と議会の対立が続いている。
地方議会は憲法に「議事機関」と明記され、議事とは討議で論点を明確化し合意形成すること。予算案などを審議して議決するが、議論の前提となる町長など執行部の事実説明が住民に正確に理解される内容だったかが重要だ。説明が不十分であれば、議会が百条委を含めた監視機能を発揮することが必要になる。対立には政治的なものもあるが、大刀洗は行政運営の問題なので政治的な対立ではないだろう。
--町長は百条委の調査項目が「公金の支出」では広すぎると批判している。
確かに広すぎる。問題がある項目に絞るべきだろう。しかし、議会がかてて問題を長年指摘して執行部が対応しなかったなら、調査項目に入れることは適切だ。調査対象項目を明記すべきだ。一方で議会もこれまで監視機能を十分発揮していたかが問われる。執行部の対応が不十分なら、地方自治法98条に基づく検査検閲権や監査請求権を行使したり、かてて予算を否決したりする方法もあった。
--かてて経理問題と百条委運営を調査する第三者委員会設置は。
かてて問題は、事実関係の究明、把握、調査、認定、評価を行い報告書を作る必要があると思われるので、設置は適切だと思う。一方で百条委の運営自体を調査する第三者委員会は、私も聞いたことがない。かなり問題があると思う。第三者委員会は事実関係を究明するもので、議会活動そのものを評価することは目的として問題がある。運営が問題だと考えれば、町長が指摘すればいい。
--町民から対立の早期解消を求める声がある。百条委は調査を続けるべきか。
「第三者委員会ができるなら、それに任せて矛を収めるべきだ」との考えには賛成できない。行政への監視は議会の大切な機能で、百条委ほか各委員会で執行部への質疑をやることは本来の役割だ。
--議会が住民との意見交換会を開き、町長も予定しているが住民参加方法としては。
住民の意見は議員が聞き、オープンな議会で熟議して政策決定することが重要。行政側がパブリックコメントや説明会で住民の意見を聞いたように見えても、実は一方的な説明で、都合のいい意見だけを取り上げることもできる。
基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する2009年の第29次地方制度調査会答申には「住民自治の根幹をなす地方議会の役割や地方公共団体における監査機能は、一層その重要性を増している」とある。議会が行政への監視機能を発揮することが重要だ。
--町長は強い権限を持つ百条委の調査が職員への人権侵害になると主張している。
百条委の議事録を見たが、とくに人権侵害と思える質問とは感じなかった。百条委は執行部に対する議会の重要な監視機能なので、人権侵害に該当する質問があるなら町長は具体的に指摘すべきだ。
