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「性善説」の選挙 二重投票やなりすまし投票は可能?


 20日に投開票される参院選をめぐって、交流サイト(SNS)では<期日前投票は身分証明不要とのこと。1人で何回でも投票できてしまうし、選挙権のない人でも投票できてしまいますね>などと二重投票などが可能であるかのような投稿がある。

 二重投票や選挙権のない人の投票はいずれも公職選挙法で禁止されているが、可能なのだろうか?

身分証の提示は義務ではない

 X(ツイッター)やインスタグラムには参院選が公示された3日前後から、<身分確認しないのだから、なりすまし投票し放題です><期日前投票は、身分証明書が必要ない。投票用紙はいくらでももらえます>といった内容の投稿が目に付くようになった。

 Xのある投稿は15日時点で約518万回表示され、4万の「いいね」を集めている。

 総務省選挙部管理課によると、期日前かどうかに関わらず、公選法では、投票の際に身分証の提示は義務付けられていない。

 期日前投票に訪れた人は、住民票の自宅住所に送付される入場整理券裏面の宣誓書に記入した有権者の氏名・生年月日・住所といった情報を受付係が選挙人名簿と照合することで、投票用紙を受け取ることができる。

 一方、選挙権はあっても入場整理券を忘れるなどする人もいる。

 そういったケースでは、入場整理券がなくても氏名などの個人情報と選挙人名簿を照合することによって、投票用紙が交付される。

 既に投票済みであればその情報は速やかに選挙人名簿に反映され、投票用紙が再び交付されることはない。

 選挙権がない人も、この段階で選挙人名簿に記載がないため、投票用紙が交付されることはない。

 したがって、冒頭の投稿のように「何回でも投票できる」「選挙権のない人でも投票ができる」というのは誤りだ。

 ただ、それでも選挙人名簿を十分に確認しないヒューマンエラーによる二重投票は起きている。

 参院選の期日前投票を巡っても9日、北九州市で職員の確認ミスによって二重投票事案が発生した。

なりすまし投票を防ぐため

 <身分確認しないのだからなりすましできる>

 公選法で身分証の提示が義務でないことを捉えたSNSの投稿だ。

 もちろん、他人になりすましての投票も公選法では禁じられている。

 総務省は、なりすまし投票を防ぐ観点から本人確認を行うよう、国政選挙のたびに自治体へ通知を出している。

 市区町村の選挙管理委員会はこの通知に基づいて、必要であれば運転免許証やマイナンバーカードなどで本人かどうか確かめている。

 東京都武蔵野市の選挙管理委員会では、二重投票やなりすましの防止のため、受付時に必要に応じて顔写真付きの本人確認書類の提示を求めている。

 宣誓書の情報と選挙人名簿を確認する際にも、投票所の職員らが有権者に不審な点がないかチェックし、必要であれば口頭での確認や所定の用紙への記載内容を精査して、追加の確認を行っているという。

 「本人情報をそらんじて言えるか。表情に不審な点はないかといったところまで見ています」

 いくつもの対策を講じていることに自信を見せる。

性善説の選挙制度

 「日本の選挙制度は性善説を前提としており、公選法にも『選挙人名簿と対照して』としか記されていません」

 投票における本人確認についてそう話すのは、40年近い選管実務経験を持つ、選挙制度実務研究会理事長の小島勇人さんだ。

 「入場整理券は世帯全員分が同封されているため、誤って家族のものを持ってきてしまうという例はありますよ」

 大抵は有権者本人が間違えて持ってきてしまったことに気付いて自己申告し、自身の入場券を取りに帰ったり、その場で所定の用紙に記入して名簿と対照してもらったりすることで投票する。

 仮に、なりすまし投票をする目的で、まだ投票していない有権者の入場整理券をその親族が持参し、写真付きの身分証がないケースではどうなるのだろうか。

 実際、親族になりすまして投票しようと試み、公選法違反(詐偽投票)で摘発される事案は繰り返されてきた。

 小島さんは「入場整理券と選挙人名簿を照合した際、受付係は『〇〇さんですね』と投票に訪れた人の顔をしっかりみて確認します。その際に生年月日と見た目の年齢がかけ離れていたり、生年月日を言えなかったりすると、大抵は逃げていきます」と話す。

 なりすましをしようとする人がいた時点で警察に通報しており、「公選法違反で人生を棒に振ることになります」と警告する。

 SNS上では「不正選挙」を念頭に身分証の提示を義務化すべきだとの声も上がる。

 「確認に時間を要することで問題ない大部分の人もスムーズに投票できなくなってしまうほか、義務化しても、身分証を偽造されてしまえば防ぎようがありません」

 小島さんは否定的だ。

 「日本の選挙制度は世界に冠たるものがあり、身分証の提示義務がなくても適正に選挙を執行できているのは国民性です。誤った言説に惑わされることなく、選挙に行って自ら決めた候補者に投票してほしいと思います」【山本萌】

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