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過疎と高齢化進む静かな里山 鳥取・栃原集落を悩ませる動物たち


 鳥取県鳥取市内から佐治川沿いの山あいの国道を車で1時間ほど、佐治町(旧佐治村)の最奥部に現れるのが栃原集落だ。岡山県境の辰己峠に近く、峠のふもとまで美しく手入れされた水田や田畑が連なる。その農地の野菜や果物が今、動物の食害で脅かされている。静かな山里に何が起きているのか。

 「シカの食欲は旺盛で、果物から、雑草から、木の皮から何でも食べよる。柵をしても、ジャンプして跳び越えてくるし、ネットも角で破ってしまう。人を怖がらなくなり、最近は庭先で寝ていることもあるわ」

 栃原集落で父の代から続く果樹園を経営する遠藤裕次郎さん(78)は、枝がかじられ、幹だけになった二十世紀ナシの木を見てため息をついた。シカが首を伸ばして届く範囲の樹皮は全て剥がれ、枯れてはいないものの、実がなることはない。

 遠藤さんは自宅周辺で2カ所の果樹園を経営。梨やブドウ、冷涼な気候を生かしフジや王林などのリンゴも栽培する。以前はイノシシ、ここ数年は生息数が増えたせいかシカによる被害が目立つ。

 果樹園を囲むようにトタン板の柵、その上に高さ2メートルほどのネットを張るが、跳躍力に優れた大型の個体がやすやすと乗り越えてくるという。柔らかい新芽や花のつぼみは大好物。春先から一日も休まず、毎日の見回りが欠かせない。

 きついのは冬を迎える準備。積雪は1~2メートルに達するため、毎年10月にはすべての柵やネットを取り外し、雪解けを待って2月には再び設置する。果樹園は足場の悪い傾斜地にあり、転倒、転落の危険もある。「高齢になっての作業は体力的にも厳しい。手伝いを頼もうにも、補助金も出ないし、人がいないので一人でやるしかない」と諦めの表情だ。

 遠藤さんは自家用に米も栽培しているが、4月のある朝、植え付けたばかりの稲の苗が根こそぎ食べられているのに気付いた。ヌートリアだ。南アメリカ原産の大型のネズミの仲間で、戦時中、毛皮を目的に養殖されていた。今、西日本を中心に分布を広げている。

 遠藤さんは「出没し出したのは2~3年ほど前から。佐治川の下から上がってきたのかな。あぜの草くらいならいいけど、田んぼに入って苗を食べるとは。苗はもう一度、植え直したわ」と悔しそうに話した。

 佐治町の人口は現在、約1500人。2004年の約2800人に比べると半分ほどに減った。65歳以上の高齢化率は56・9%と高い。鳥取市佐治町総合支所の下田俊介支所長は「長期的な人口減に歯止めがかかっていない」と懸念を話す。

 栃原集落には現在、10世帯ほどが暮らしている。進学や就職で若い世代が残らず、住民の男性(67)は「過疎と高齢化が一気に進み、動物の増加と生息域の広がりに対抗できていない。わなを扱える狩猟免許を持っている人も次々と引退し、今は集落に1人だけ。この先どうなっていくのか」とため息をつく。

 鳥取県鳥獣対策課のまとめでは、県内の昨年度の野生鳥獣による農作物の被害額(3月末時点)は前年比162%の8100万円。イノシシやシカによる水稲被害が大きく、クマやハクビシン、カラスによる被害も増えている。シカについては有害鳥獣として年間1万4000頭の捕獲目標を設定しており、最近は過去にはなかった県西部での捕獲数が増え、生息域を大山周辺など西へ広げていることがわかるという。【山田泰正】

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