
「ようやくここに来られた」「一緒に帰ろう」――。
北海道・知床半島沖で26人が犠牲になった観光船沈没事故で、13日に初めて発生現場で営まれた洋上慰霊。参加した被害者家族40人のうち4人が下船後の取材に応じた。
海で最愛の人に語りかけた言葉。それぞれの思いを明かした。
長男の小柳宝大(みちお)さん(当時34歳)が行方不明になった福岡県久留米市の父親(66)は、沈没地点で「宝大(みちお)ー!」とめいっぱい大きな声で叫んだ。
「2年前の9月にも大型観光船で訪れたが、その時は他の客がいたのでそっと献花するしかなかった」
今回は思いっきり名前を呼べた。
「涙がいっぱいあふれてきた」
父親は知床の地元漁師から「行方不明になった人の名前を半紙に書いて海に投げると、その人に届く」という言い伝えを聞き、家族全員で宝大さんの名前を墨で1枚ずつ記してきた。
「体は戻ってこなくても、魂だけは連れて帰って、安らかに眠ってもらいたい」
そう願った。
同じく長男(当時34歳)を亡くした千葉県松戸市の父親は洋上慰霊を終え、「沈没地点で花を投げ込んだ時は涙が止まらなかった」と語った。
自分たちは無事に港に帰ってきたが、息子には帰り道がなかった。
そう思うと、今も悔しくてたまらない。
「ここで命を落としたんだな。つらかっただろうな」
息子が最後に見たであろう景色を目に焼き付けた。
「思っていたよりずっとすぐそばに岸が見えるのに、4月の氷水のような水温では泳げなかったはず。どんなに怖い思いをしただろう」
船上から事故海域を確認した道内に住む男性(53)は、行方不明になった息子(当時7歳)と元妻(同42)が体験した心身の苦痛に思いをはせた。
「生存の可能性が厳しくても、家族を信じて待ち続けないと、自分を保てない」
複雑な気持ちで参加した。だが、船を下りた後には少しだけ前を向けた。
「二度とないかもしれない機会に来ることができて本当に良かった」【伊藤遥、和田幸栞】
