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コメ高騰で酒造りがピンチ かつてない試練迎える伝統産業の現場


 海外でも人気が高まる日本酒だが、国内での消費量は伸び悩み、小規模な酒造会社は厳しい経営環境が続く。そこに襲ってきたのがコメ不足による酒米の高騰だ。日本の伝統産業である酒造りの現場は、かつてない試練を迎えている。

 和歌山県岩出市の酒造会社「吉村秀雄商店」は、1915年に創業。看板商品の「車坂(くるまざか)」は、海外の品評会でも高い評価を受ける。木造の酒蔵の隣には約2000平方メートルの水田があり、6月中旬には地域住民らを集めた田植えイベントが開かれた。

 梅雨の合間の晴天の下、参加者は足元を泥だらけにしながら日本酒の原料である酒米の苗を植えていった。和歌山市から参加した女性(40)は、「私は日本酒は飲まないけど、子どもが田植えをしたいと言って申し込んだ。この苗から、お酒ができると思うと面白い」と話した。

 ただ、この田んぼで収穫できる酒米の量は、酒蔵で年間に使う原料の数%にも満たない。面積の大部分を森林が占める和歌山県では米作りに向いている土地が少なく、蔵元では県外産の「山田錦」などの酒米を調達して日本酒を仕込んでいる。日本酒は価格が安い加工米でも造ることができるが、品質の高い商品には酒米が欠かせない。

 酒造りのリーダー的な存在である杜氏(とうじ)を務める藤田晶子さん(44)も、この日は参加者と一緒に田んぼで汗をかいた。東京都出身の藤田さんは大学卒業後、「酒造りの神様」と称される能登杜氏の農口尚彦氏の下で酒造りを学んだ経験を持つ。

 藤田さんにとって6月は酒造りを終えて一息つける時期だが、冬から始める次の仕込みのことを考えると気がかりなことがあるという。酒米価格の動向だ。「去年から値段がめちゃくちゃ上がっている。必要な量を確保できるかが心配」とこぼす。

 和歌山県内の酒造会社に酒米を販売している卸売会社によると、23年に60キロで約1万6000円だった酒米は24年には約2万円に上がった。コメの価格高騰で、農家には手間のかかる酒米から主食米に転作する動きが出始め、25年は2万5000円程度にまで値上がりする見通しという。

 吉村秀雄商店の「車坂」は居酒屋などで提供されることが多く、多くの飲食店が休業した新型コロナウイルス禍では売り上げが半分に減るほどの打撃を受けた。その後は回復したものの、今度は原材料の高騰が経営を襲う。担当者は「約10年にわたって値上げしていないが、今秋には検討しなくてはならない状況だ」と打ち明ける。

 すでに大手酒造会社では、原料米の値上がりなどを理由に日本酒の値上げの動きが相次ぐ。白鶴酒造(神戸市)は、日本酒などの酒類や食品約180品目を10月出荷分から5~18%値上げすると発表した。月桂冠(京都市)も、日本酒など163品目を10月出荷分から値上げする。

 一方で、小規模な酒造会社では値上げに慎重な動きも見られる。日本酒の国内消費量は低迷しており、客離れに拍車をかける恐れがあるからだ。従業員15人と規模が大きいとは言えない吉村秀雄商店も値上げせずに企業努力を重ねてきた。

 山形県は県内の酒造会社に対し、酒米の値上がり分の半額を補助する事業を始めた。県内産の酒米が対象で、23年から24年にかけて60キロあたり約1800~2000円値上がりしたという。担当者は「日本酒は産業や観光の面でも、県にとって重要な存在。一方で酒蔵は中小企業が多く、急激な酒米の値上がりに対しては迅速な支援が必要だ」と説明した。

 秋田や長野、福井県も同様の支援策を打ち出している。ただ酒造りや酒米生産が盛んな地域が中心で、全国的な動きにはなっていない。

 農業や酒米に詳しい日本総合研究所の三輪泰史チーフスペシャリストは、「今回の酒米の高騰は、企業努力でカバーできる範囲を超えている。自治体による支援がなく、値上げもできない酒造会社は経営的に追い込まれる可能性がある。資金面などで手厚い支援が必要だ」と警鐘を鳴らした。【小坂剛志】

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