
信号機のない横断歩道での車の一時停止に関する調査で、石川県は全国で2位だった一方、福井県はワースト3位、富山県は最下位となった。調査地点の条件が不明のため一概に比較はできないものの、気候や住民の気質も近い北陸3県で大きな差が出る結果となった。富山、福井は7割近くの車が停止しておらず、歩行者優先ルールに対する意識の低さが浮き彫りになった格好で、各県警が対策を強化している。【浜名晋一、萱原健一、島袋太輔】
道路交通法は、横断歩道での歩行者や自転車の優先通行を定めており、違反した場合は「信号無視」と同じ9000円の反則金を科せられる。
調査は、日本自動車連盟(JAF)が実施し、2018年から都道府県ごとのデータを公開している。各都道府県で信号機を設置していない横断歩道2カ所を選び、職員が実際に計100回渡って手前で停止する車の数を数えた。24年の調査結果によると、石川が80・9%で、トップの長野(87%)に次いで2位。福井は34・7%で45位、富山も31・6%で47位だった。
福井市の40代の男性は「横断歩道を渡ろうとする私の前を止まらず通過した車のドライバーを見ると、逆ににらみ返された」と、北陸のドライバーの意識の低さを嘆く。
前年比18ポイント以上減 富山
トップ2の長野、石川と接している富山は、前年から18ポイント以上の大幅減となった。
初回の18年調査では富山が4・8%、全国平均も8・6%といずれも1割に満たなかった。しかし、その後、全国的に上昇傾向が続き、22年調査では富山が北陸3県で最も高かったこともあった。今回の全国平均は53%にまで伸長し、富山の低さが際立つ形となったが、JAF富山支部は「はっきりとした理由はつかめない」と首をかしげる。
危機感を強める富山県警は20年から「思いやり作戦」と名付けたキャンペーンを展開し、取り締まりやドライバーへの注意喚起を徹底する。また、歩行者に横断の意思をはっきり示してもらうため、信号機のない横断歩道では手を高く上げて渡るハンドサインの普及にも努めている。
ただ、「やれることは限られる」(県警交通企画課)のが現状で、県警の担当者は「事故が起きた時の結果の重大性を考えてほしい」と、ドライバーに安全運転を呼びかける。
24年調査8ポイント改善 福井
富山と3・1ポイント差の福井。福井市の男性は、石川の結果について「お隣の金沢は街中に歩行者が多く、一時停止しないといけないという意識も自然に生まれてくるのだろう」とする一方、福井については「車社会で郊外に行くと人が歩いていない。逆に歩行者の方に、自分が車を止めるのが申し訳ないと思う人すらいる」と話し、交通事情の違いを要因に挙げる。
歩行者保護の意識醸成に取り組む福井県警は、交通事故の分析や地域住民の要望などから「重点横断歩道」を選定し、交通指導取り締まりを強化する。
対策の成果か、24年調査では前年比で8ポイントの改善が見られた。県警交通部の田中弘宣管理官は「停止率が大きく上昇した石川や、以前から停止率の高い長野などの取り組みも参考にしつつ、取り締まりの強化や広報啓発、交通安全教育などに取り組んでいく」と強調した。
道路標示周知徹底 石川
一方、23年以降、数字が大きく改善した石川。県警の担当者は「歩行者優先を意識付けさせる対策を地道に続けた結果、県民の意識が高くなったのでは」と分析する。
18年から歩行者の安全対策を進める県警は、前方に横断歩道があることを予告する道路標示「ダイヤマーク」の周知を強化。さらに一時停止しなかったドライバーに対する取り締まりも行った。その結果、横断歩行者妨害の取り締まり件数は、17年に299件だったのが、18年は687件に増加。23年は4636件と、対策前の15倍以上になったという。