
熊本県荒尾市の児童養護施設に入所していた女性(24)が中学生だった頃から数年間、当時の職員から性的虐待を受けていたにもかかわらず、施設側が被害を防ぐ義務を怠ったとして、運営する社会福祉法人と当時の施設長を相手取り、2200万円の損害賠償を求める訴訟を26日、熊本地裁に起こした。
訴状などによると、女性は中学2年生だった2014年ごろから数年間、男性職員(当時)から性的虐待を受け、高校1年の時に妊娠し、中絶。女性の友人が施設側に女性と元職員の関係性について訴えたことがあったが、適切な対応が取られなかったなどとしている。
元職員は児童福祉法違反罪で懲役1年10カ月の実刑が確定し、服役したという。
女性は26日、「自分のような思いをする子がこれ以上出ないように」と顔を出して記者会見した。PTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断を受け、現在も通院を続けているといい、「このままではうやむやになってしまうと思った。施設側の責任も認められてほしい」と語った。
代理人の井上莉野弁護士は「原告が顔を出すのは弁護士としても悩んだが、『同じような被害者を出してほしくない』という本人の強い思いから会見に至った。今後同じようなことが起きないよう『社会の目』という形でしっかり見てもらたい」と述べた。
社会福祉法人は「訴状をよく見て、適切に対応したい」としている。【野呂賢治】
「大切な十代の時間、人生奪われた思い」
女性は記者会見で「被害を打ち明けたことによって被害を受けた人がさらに傷つくのが今の日本だと思う」と語り、サポートの重要性を訴えた。
被害当時、「保護者のような立場の加害者に依存するように支配されていて、私の言うことは誰も信じてくれないと思い込まされていた」という女性。不安や怖さを抱えながら被害を打ち明けた。
「(捜査機関には)容赦なくいろいろな事を聞かれる。仕事で聞かなければいけないのは分かるが、つらいこともたくさん思い出した。自分が悪かったのかな、と思うこともたくさんあった」
周囲からは「なぜ拒否しなかった」「なぜ今まで被害にあったことを誰かに言わなかったのか」などと言われた。「被害を打ち明けることは、私にとってやっと踏み出した一歩で、大きな一歩だった。でも、私に向けられた容赦ない言葉で何度もつまずき、転び、傷ついた」と振り返る。
顔を出して会見することについては、「当時施設にいた無関係の子たちが被害者じゃないかと誤解され、臆測でSNS(ネット交流サービス)に書き込まれる可能性があると考えたから」という。「(施設に)助けてもらえていたら、もっと早く被害から抜け出せたのにと何度も思った」と心境を吐露し、「大切な十代の時間を奪われ、自分の人生を奪われた思いがする」と訴えた。
