
2011年の東日本大震災で被災した岩手県大槌町にある民間施設「大槌伝承の館(やかた)」の開館1周年記念シンポジウムが22日、同館であった。震災復興や伝承に関わったパネリストが、それぞれの立場から語り継ぐことの重要性を訴えた。
伝承の館は24年6月に開館。被災者支援を続けてきた麦倉哲・岩手大名誉教授(69)が知人から町中心部にある建物の提供を受け、町内在住で震災遺族の倉堀康さん(41)と共同で運営する。震災時の写真など資料250点を展示する他、防災学習会や茶話会を開催し、1年間で延べ300人が来館した。
シンポは「震災15年を前に私たちはなにをどう伝承するのか」と題して開催。町民ら25人が耳を傾けた。
前田建設工業(東京)の土木技術者で、今春まで4年間大槌町に出向し、防災対策課長を務めた島村亜紀子さん(55)は「技術者は(防潮堤などで)津波から命を守れると言っていたが、そうではなかった。津波は逃げるのが一番であることを伝えていかなければならない」と語った。
麦倉さんは「死者との対話」と題して、震災遺族がさまざまな形で犠牲者に向き合ってきたことを紹介し「一人一人の死を忘れず、寄り添うことが大切だ」と説いた。倉堀さんは「震災を知らない世代も増えており、記憶をつなぐため、体験を聞く場所を作る必要がある」と主張した。
大槌伝承の館は町役場から徒歩1分。見学は無料。問い合わせは倉堀さん(090・5591・5776)か、麦倉さん(090・6713・5858)。【奥田伸一】