
イスラエルの攻撃が続く中、イランの「報復」が激しさを増している。イランは16日朝までに少なくとも8回のミサイル攻撃を行い、世界屈指の防空網を誇るイスラエルで多数の死傷者を出した。最新鋭のミサイルはまだ温存されているとの報道もある。イランのミサイルは、今どれだけ残されているのか。
「これまでよりも破壊的な作戦を実施した」
イランの精鋭軍事組織・革命防衛隊は16日、第8波として最大規模の攻撃を実施し、「新たな方法」で命中精度を高めたと発表した。この攻撃では、イスラエル中部の住宅地などが被害を受け、少なくとも8人が死亡した。イランメディアは、国産の極超音速ミサイル「ファタ」が使用されたと報じた。
米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が13日に公開した分析によると、イランが保有する弾道ミサイルは最大3000発と見積もられていた。ただ、このうちイスラエルを射程に収めるものは3分の2程度とされる。
もっとも、すべて撃ち尽くすわけにはいかない。将来の抑止力のため、一定数を温存しておく必要があるからだ。さらに、イスラエルの攻撃で破壊されたミサイルもあるとみられる。このため、CSISの分析では、イランが報復攻撃に使用できるのは「1000発にとどまる」と指摘されている。
地元メディアによると、イスラエル軍もイランのミサイル保有数を1500発程度と推定している。一方、ハネグビ国家安全保障顧問は16日、イランはなお「数千発の弾道ミサイルを保有している」と強調。ネタニヤフ首相も13日の声明で、「イランは3年間で1万発のミサイルを製造できる」と訴えた。
イスラエルの発表によると、イランは16日昼の時点で、370発以上の弾道ミサイルを発射し、少なくとも30発が着弾した。迎撃率は約9割に上る計算だ。
イラン情勢に詳しいレバノンの専門家、カレド・アルハッジ氏は、現在のペースならイランは2週間以上攻撃を継続できると予測する。
そのうえで、「発射数を増やせば防空網をかいくぐる可能性も高まる。イランには、限定的な波状攻撃で圧力を続けるか、短期間の大規模攻撃に出るかの二つの選択肢がある」と指摘。「今はエスカレーションの段階だ。イランは強い立場で(停戦)交渉に臨むため、攻撃を続けるだろう」と分析した。【カイロ金子淳】