
滋賀県湖南市立甲西中の夜間学級が始まって2カ月がたった。新たな学びの場を心待ちにしていたのは生徒だけではない。学び直そうと入学してきた生徒に、日々向き合っている甲西中の藪下和彦校長と夜間学級の青木義道教頭に話を聞いた。
藪下和彦・甲西中校長
――生徒に対してどのような思いがありますか?
卒業後は21人それぞれ違う進路になる。目指す方向が違うのでこうしてほしいというよりも、多くの人が学び直しで来ているから、今まで知らなかったことや分からなかったことを分かったりできたりした実感を持ってほしい。
――夜間学級ならではの良さや大変な面はありますか?
分からないことを「分からない」といえることがとても大事。同世代の集団で学習する時は、分からないと言えば、ばかにされると思い、なかなか言いにくい。夜間学級はいろいろな年齢の人がいて、育ちも違うので割と言いやすい環境だと思う。一方で、年齢や育ちが違うから、集団作りは簡単にはいかない。個別の信頼関係をしっかり作っていく必要がある。
――学びに対してトラウマがある生徒もいる。挫折しないように卒業までどのようにサポートをしていきたいですか?
夜間学級の生徒が入学を決めたことは非常に大きな決断だったと思う。今までの学びがどの程度の学びだったのか、育ちの部分まで踏み込んでいかなければならない。21人それぞれのバックボーンを意識して、生徒らの「自分で決めたこと」を後押しできるように一緒に悩んだり勉強したりしていきたい。
――昼間の生徒と夜間の生徒の関わりはありますか?
直接的な交わりはこれから先のことだが、人の気配や存在があることが大事で、夜間学級の開設式に向けてウエルカムボードを昼間の生徒が作ったり、合同で入学式を行ったりした。7月の文化祭や合唱コンクール、10月の体育祭などで交流できる場を作っていきたい。
青木義道・夜間学級教頭
――開設してどのような心境ですか?
皆さんが笑顔で毎日通ってくださっていることがとてもうれしい。教員も生徒も一緒に学ぶことにやりがいを感じている。
――国籍も年代もさまざま。どのように授業をしていますか?
ペースとしてはゆっくりと優しい日本語を使って授業している。一つの説明であっても言い回しを変えないといけないことがあるし、教科書が理解できない方には特別なプリントを作ったり、オリジナルの教材に作り替えたりしている。
――教員たちにとっても夜間学級の授業は初めて。様子はどうでしょうか?
昼間の授業とは違った環境だが、日々試行錯誤しながら一定のリズムをつかんできたと思う。授業を準備する中でどのように生徒に伝えればいいのか先生同士で悩みながら考えている。うまく伝わったという後日談もあれば、思っていたより進まないこともある。生徒一人一人の状況を見ながら授業をしている。【菊池真由】