
英国のスターマー政権は2日、今後10年間の国防戦略「戦略的防衛見直し」を発表した。次世代の攻撃型原子力潜水艦を最大12隻建造するほか、15億ポンド(約2900億円)を投じて少なくとも6カ所の弾薬工場を新設することなどが柱だ。
ウクライナ侵攻を機に高まるロシアの脅威や、トランプ米政権の欧州防衛への消極姿勢などを踏まえ、冷戦終結以降続いてきた軍備の縮小傾向に歯止めをかける。
「戦闘準備態勢へ」
スターマー首相は2日の演説で「ロシアはすでに我々の空や海に脅威を与えており、サイバー攻撃の恐れもある」と強調し、「戦闘準備態勢に移行する」と表明した。
新造する次世代型原潜は、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」で共同開発され、核兵器ではなく通常兵器が搭載される。2030年代後半から、アスチュート級原潜7隻と交代する形で運用を開始する予定で、艦隊を増強する。
新戦略にはほかに、150億ポンドをかけて新型の核弾頭開発を進めることなども盛り込まれた。
陸軍、最低10万人
陸軍については、「常備軍と予備役をあわせて最低10万人、そのうち常備軍は7万3000人とすべきだ」とうたった。常備軍は減少が続いてきた。ヒーリー国防相によると、現在は19世紀のナポレオン戦争終結以降で最少の7万860人に落ち込んでいる。
一方、トランプ政権が英国を含む北大西洋条約機構(NATO)加盟国に要求する防衛費の増額を巡っては、新戦略は30年代に国内総生産(GDP)比で現在の2・3%から3%に引き上げることを目指すなどとした。ただ、達成時期は明示しなかった。
日伊との協力も
NATOは6月24~25日の首脳会議で、加盟国の防衛費を32年までにGDP比3・5%に引き上げることで合意する見通しだ。英国の新戦略は現状ではその目標を下回ると言える。
そのほか、新戦略では国際協力の実例として、日本、イタリアと進める次期戦闘機共同開発(GCAP)にも言及した。「親密な同盟国との協力を通じて英軍に次世代の戦力を提供する」と説明している。
新戦略は140ページあり、NATO事務総長を務めたロバートソン元国防相らが政権の委託を受けて策定した。中国については「洗練された持続的な挑戦」、イランと北朝鮮は「地域のかく乱要因」とそれぞれ位置づけた。【ロンドン福永方人】
