
ふるさと納税は“カタログショッピング”。返礼品競争には参加しない――。静岡県長泉町はこれまで、ふるさと納税に対し超然としていたが「6月1日から16品目33種類の返礼品をそろえ、ふるさと納税に本格的に乗り出す」と28日発表した。ふるさと納税による2024年度の町税流出額が全国の町村で最悪の約2億3000万円となり、これ以上、見過ごせないためという。
池田修町長は、ふるさと納税を「制度設計の甘い問題点が多い制度」と訴え続け、主な問題点として①寄付金の半分が使えない②普通交付税の算定から除外されている③不交付団体に赤字補塡(ほてん)の救済制度がない――などを挙げていた。
ふるさと納税は、寄付額の30%が返礼品に、20%が運営サイト費や事務費に消え、寄付を受けた市区町村が自由に使えるのは寄付額の50%に過ぎない。また、寄付金の扱いなので、市区町村の財政力を示す基準財政収入額に算定されず、ふるさと納税で何十億円も荒稼ぎしても、国から普通交付税を受け取ることができる。
さらに、税流出による赤字分の75%を地方交付税で補塡する救済制度があるが、不交付団体の長泉町には適用されない。町はこのような問題点を住民に知ってもらおうと、2年前には「広報ながいずみ」で特集まで組んだ。
長泉町のふるさと納税による町税流出額は、毎年3000万~4000万円増えており、22年度から3年連続で全国の町村ワースト1になっている。
流出額が多い理由は皮肉なことに町民が豊かなためだ。町によると、町民1世帯あたりの平均課税所得は約400万円で、県内2位の三島市に数十万円の差をつけ断然トップ。また、町の納税義務者数に対するふるさと納税利用者数の割合は19・2%で、やはり県内トップだ。長泉町は新幹線で首都圏に通えるうえ、内陸に位置し津波の心配がない人気の町だ。ふるさと納税は、寄付額が多い豊かな人ほど、利用するメリットが大きい。この制度設計が流出額増加という結果になって表れた形だ。
ふるさと納税で町が方針を変えるのは実は2度目。23年に町内のゴルフ場2カ所と野外活動センターの利用者が割引を受けられる“現地応援型”の返礼品を始めている。この時は「返礼品が体験なので返礼品競争ではない」(同町)としていた。
抜本的な方針転換を発表した28日の記者会見で池田町長は「2億3000万円マイナスという金額はあまりに大きい。他市町との競争にはくみしないとしてきたが、制度を批判するだけで何も対策をしなければ町民に理解されないと思った」と苦い表情で説明した。
新たに用意した返礼品は、長泉メロン、四ツ溝柿、あしたか牛など町の特産品が並ぶ。従来は「予約で完売するなどで、取り扱いが少なく返礼品にするのは難しい」としてきたが、協力が得られたという。今年度の寄付額目標は7000万円。24年度の寄付額は1490万円だったので、5倍弱の伸びを見込んでいる。【石川宏】
