
うさぎ、甘シャリ、懲役太郎――。法務省は、こうした刑事施設内で使われてきた俗語・隠語を廃止し、刑務所の組織風土の改革を進めている。懲役と禁錮を一本化する「拘禁刑」が6月から導入されるのを前にした取り組みの一つだ。
刑務官ら職員同士や受刑者との間では、施設内の生活に関する俗語・隠語が長年、使われてきた。
たとえば、逃走を意味する「うさぎ」、手紙を秘密裏に回すことを指す「鳩(はと)をとばす」。会話や私語は「アゴ」、密告は「ちんころ」、懲役で義務付けられている作業を拒否することを「ケツワリ」と呼んでいた。
食事に関するものも多い。通常より多くの食事を盛り付けることを「ヅケ盛り」、砂糖や菓子類は「甘シャリ」と表現。食後の食器を下げる行為は「空下げ・空上げ」だった。
他にも、罪を繰り返す累犯者を「太郎・懲役太郎」と呼ぶ不適切なものもあった。
拘禁刑では、受刑者の特性に合わせて作業と指導を柔軟に組み合わせた処遇プログラムを実施する。「懲らしめ」の要素が強かった刑罰は受刑者の更生に重点が置かれることになる。
しかし、刑務所内でしか通じないコミュニケーションやルールは排他性を高め、社会復帰の障害となる恐れがある。このため、法務省は2024年2月に35の俗語・隠語の廃止を決めた。
当時の小泉龍司法相は「人間の心や精神は言葉とつながっている。言葉がゆがめば虐待的な行動が誘発されかねない。一般社会では使用されない言葉を廃止していく」と理由を説明している。【三上健太郎】