
大阪・関西万博が始まった13日、「万博マニア」の藤井秀雄さん(66)=大阪市住之江区=は会場にいち早く駆け付けた。たくさんのピンバッジを身に着け、小走りで会場を巡る藤井さん。海外の万博で知り合ったスタッフとの偶然の再会も果たし、「ワクワクして最高です!」と笑った。
藤井さんは午前4時に起き、同6時ごろに会場にやってきた。同9時のオープンを待つ列の先頭近くに並んだ後、入場ゲートをくぐり抜けた。「ファーストカスタマーになりたい」として、海外パビリオンの「最初の客」を目指した。
ところが、同11時ごろまでオープンしないパビリオンもあり、「ファースト」は逃したものの、サウジアラビア館に向かった。
「グッドモーニング!」。気さくにあいさつしてパビリオンに入った藤井さん。すると、スタッフから日本語で「お久しぶりです」と声を掛けられた。
藤井さんは当初気付かなかったが、ドバイ万博(2021~22年)で知り合った男性だと分かった。偶然の再開を果たし、握手を交わす2人。満面の笑みを浮かべる藤井さんは、ピンバッジを交換し、記念撮影やコミュニケーションを楽しんだ。
藤井さんはこの日、ずっと小走りだ。記者が「体力ありますね」と聞くと、「万博会場に来れば元気になる。これまでの万博で鍛えてきた体力です」と声を弾ませた。
マニアとなるきっかけは小学6年生にさかのぼる。1970年の大阪万博で「未来の世界」に魅了された。11回訪れて全てのパビリオンを堪能し、「見るもの全てが楽しかった」と振り返る。大人になっても「とりこ」になったまま。会社員の傍ら、国内外の万博に通い詰めた。
「エクスチェンジ プリーズ!」。各国の会場に出向けば、外国人らに声を掛けてきた。「言葉が通じにくくても、心は通じ合うから」。国旗やキャラクターをあしらったピンバッジをたくさん交換してきた。
「未来との出会い、世界との出会い、リアルな出会い」。藤井さんが語る万博の魅力だ。再び大阪での開催となり、「パスポートもなく、日本語で世界旅行ができる。158カ国・地域を旅しようと思ったら時間もお金もかかって大変ですから」と笑う。
今回は全周約2キロの「大屋根リング」がシンボルとなっている。紛争やコロナ禍で分断が進む世界をつなげる「多様でありながら、ひとつ」との願いが込められている。
リングを見上げた藤井さんは「高くて、壮大です。柱と柱が組み合わさっている姿には、助け合いの思いが込められていると感じる」。海外のパビリオンは全てリング内に設置されていることから「戦争してお互いの命を取り合っていたらあかん。世界が助け合い、手をつないで一つになってほしい」と語った。
この日、午前11時にオープンしたドイツ館で「ファーストカスタマー」として出迎えられた藤井さん。ピンバッジが注目の的となり、急きょオープニングセレモニーに招待された。テープカットでは「コングラッチュレーション!」と大きな拍手を送った。
「それぞれの国への関心を伝えることで、喜んでもらえるのがうれしい」。藤井さんの万博は始まったばかりだ。【長岡健太郎】