
トランプ米大統領による「相互関税」上乗せ分の90日間停止表明を受け、各国・地域からは安堵(あんど)の声があがった。発動からわずか13時間後の大方針転換。各国・地域は停止期間中に米政府との交渉を進め、予測不可能な「トランプ関税」のリスクを少しでも回避したい考えだ。
東南アジア諸国連合(ASEAN)は10日、相互関税への対応を協議する特別経済相会合をオンラインで開き、「いかなる報復措置もとらない」とする共同声明を採択した。
加盟10カ国は、カンボジア49%▽ラオス48%▽ベトナム46%▽ミャンマー44%――など高い関税率が設定されている。声明は一方的な関税導入を「深く懸念する」と表明しつつも、米国と「率直で建設的な対話」を行うことも強調した。
各国・地域はトランプ政権との個別交渉を加速させている。ベトナムは、ホー・ドク・フォック副首相が9日に米通商代表部(USTR)のグリア代表と面会した。双方は長期的に安定した関係構築を目指し、貿易協定の締結に向けた交渉開始で合意したという。地元メディアが報じた。
32%の関税発動が延期された台湾も90日の間に米国との交渉を進め、域内経済への影響を最小限にとどめる構えだ。台湾は当初から報復関税は行わず、米国から天然資源や兵器を大量に購入して対米貿易黒字を縮小させる方針を明らかにしている。
台湾の行政院(内閣に相当)は10日、中小企業に対する優遇融資や産業の競争力強化など総額880億台湾ドル(約3900億円)の対関税支援策をまとめた。卓栄泰行政院長(首相に相当)は院内の会議で「(一律に課される)10%の関税は予想の範囲内だ。米国と交渉して国際的な競争力を守る」と述べた。高い関税が課せられる中国に進出する台湾企業「台商」には全面的な支援を行う。台湾メディアによると、会議に出席した主要都市の市長らからはこんな声があがったという。「発動は猶予されたが、危機はまだ終わっていない」
欧州もトランプ政権側との交渉を進める。ドイツで次期首相となる「キリスト教民主同盟(CDU)」のメルツ党首は9日、公共放送ARDのインタビューで、トランプ氏との会談に意欲をみせた。日程は未定だが調整中という。メルツ氏は「ドイツのためだけに話すつもりはない。欧州の他の国々の代理として発言したい」と述べ、欧州諸国と調整した上で会談に臨む方針を示した。別のテレビ番組では「関税ゼロの貿易が最も良い」と語り、トランプ氏に欧州との「関税ゼロ」貿易を提案したいとも語った。【バンコク武内彩、国本愛、台北・林哲平、ベルリン五十嵐朋子】
