
新型コロナウイルス感染症で重症化するメカニズムをマウス実験で明らかにしたと、東京大新世代感染症センターの河岡義裕機構長らの研究チームが発表した。肺の血管内に白血球の一種が異常に接着することで血流が滞り、重篤な肺炎を引き起こす可能性が示された。
新型コロナは、高齢者や基礎疾患がある人で重症化しやすいことが知られている。要因の一つとして、肺に血栓ができることで重い肺炎となることが知られるが、その形成過程などのメカニズムは不明だった。
研究チームはまず、さまざまな基礎疾患のモデルとなる7種のマウスを用意。それぞれにウイルスを感染させたところ、肥満・糖尿病モデルで重い肺炎が起き、著しい死亡率の上昇が見られた。
このモデルの生きたマウスで、肺炎を引き起こす様子を確認した。その結果、白血球の一種「好中球」が肺の血管の壁に異常に接着し、それに伴って血小板が集まり、血流が阻害されることが示唆された。好中球の表面には、接着を促す因子が通常よりも多く出ていたという。
重症患者でも、好中球の表面に接着因子が多く出ていることを示すデータがあり、重症化の一因であると考えられる。このため研究チームは「異常接着を防いだり、異常な接着を引き起こす好中球を除去したりすることで、重症化を予防できると期待される」とする。
河岡さんは「肺などにできる血栓は、新型コロナ後遺症の一因とも言われている。今回の研究で見いだしたメカニズムは後遺症にも関わっていると考えられる」と強調した。
成果は英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。【渡辺諒】