
宇宙の玄関口となる「スペースポート」を高知に――。高校の同級生2人が主導し、高知県で民間のスペースポート誘致運動が始まった。2029年度にロケット初号機を打ち上げるのが目標。土佐の海から世界の大海原を目指した龍馬にちなみ、高知から宇宙への夢を膨らませている。
スペースポートは、人工衛星やロケット、宇宙船が出発・帰還する発射場。日本ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)の種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)のほか、北海道や和歌山県などの民間施設にロケット発射場がある。
25年2月、高知の誘致プロジェクトで中心となる一般社団法人「スペースポート高知」が設立された。代表理事の古谷文平さん(40)と発起人の小松聖児さん(40)は、高知出身で高校の同級生だ。
古谷さんは商社勤務を経て19年に高知へUターンし、現在は高知サンライズホテル(高知市)の常務を務める。これまで宇宙産業との関わりはなかった。スペースポート誘致の狙いについて「高知の将来を考えた時、有力な地域活性化策だと考えた」と話す。
現在のロケット発射場がある地域は中山間地が多く、交通の便や宿泊、観光の面で課題がある。一方、ロケット打ち上げに適した東と南側に開けた土地があり、港湾▽飛行場▽陸路の交通▽観光・娯楽インフラ――が既にそろっている高知市近郊は地の利に恵まれており、スペースポート建設に伴う課題の多くを克服できるという。古谷さんは「高知は他のエリアより地理的に優位。人口減少や産業の衰退など高知が抱える課題の解決にもつながる」と強調する。
世界的には商用ロケット打ち上げの需要増加に伴い、スペースポートの供給不足が課題となっている。各国で建設に向けた検討が進んでおり、「宇宙ビジネス」としての将来性も期待できるという。
プロジェクトの総投資額は概算で300億円、経済波及効果は10年間で2000億円と見込んでいる。今後は関係者で勉強会を実施した後、9月ごろ県に対してスペースポート誘致の政策提言をする予定だ。趣旨に賛同する企業の参加も募っている。
古谷さんは「スペースポートは単にロケット発射場がある場所にするのではなく、まちづくりの一環として誘致に取り組みたい。博物館や商業施設も併設し、ワクワクしながら楽しめる場所を目指す」と話している。【小林理】