
「文科大臣は『国賊』だ」――。中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)委員の任命について島根県の丸山達也知事が痛烈に批判したことについて、阿部俊子文部科学相は14日の閣議後記者会見で「強いお言葉だった」とした上で、委員の任命について「今後の教育政策のあり方を審議していくために幅広い意見を取り入れる体制とした」と述べた。
発端は、慶応義塾長の伊藤公平氏が10日付で中教審の新たな委員に任命されたことだった。伊藤氏といえば24年3月、大学など高等教育機関の将来像を議論する中教審の特別部会で、国立大の授業料を現在の約3倍となる150万円程度に引き上げることを提唱し、大きな波紋を呼んだ。
丸山氏は12日の定例記者会見で25年度の政府予算案に高校授業料の無償化が盛り込まれたことの所感を問われると「これは聞かれた事からちょっと外れますけど」と前置きし、「高校無償化を進めるということと全く相矛盾することが政府において進んでいる」と語り始めた。
伊藤氏の任命について「物議を醸した人を中教審の委員にするのは、国立大の授業料を引き上げる宣言をするのと同じ」と指摘。私立大がない県内の状況に触れ「地元の島根大ならばそれほど仕送りをせずに、なんとか大学を卒業させられるという選択肢が残されている。国立大の授業料を3倍にすることは、その道を閉ざすことだ」と憤った。
さらに、自身の生い立ちにも触れた。専業農家の長男で裕福な家庭ではなかったが、授業料半額免除の措置を受けて東京大に進学したとして「私は国立大に行かせてもらえる道を社会に作ってもらったから、県知事という仕事をやらせてもらっている。(授業料を)3倍にさせられる時代に生まれていたら、同じ人生を歩めない」とした。
続けて「そういうことを言う人を中教審の委員にわざわざ任命しようという文科大臣は『国賊』だと思う」と語気を強めた。【井川加菜美】