
事業費の高騰で再開発計画の見直しが決まった複合施設「中野サンプラザ」(東京都中野区、2023年7月閉館)を巡り、区は11日、野村不動産などの事業予定者と結んだ協定を解除する意向を区議会で表明した。事業者の同意を得て協定解除となれば、計画は白紙に戻り、建て替えは大幅に遅れることになる。
再開発計画は、資材や人件費の高騰によって、当初より事業費が上振れして停滞していた。野村不動産などは当初の計画よりも事業費を抑制できるとして、「ツインタワー」を建てる見直し案を示していたが、区は、この案を受け入れないことを表明した。
区はツインタワー案について「100年先においても中野区の顔となる特別な場所で進めていく提案としては、必ずしも十分ではない」と指摘。さらに、事業者側から「事業収支は今後、変更の可能性がある」という説明があったため、「事業成立性の見通しが明らかではない」と判断した。区の担当者は取材に「当初の1棟案からはあまりにも大きな変更だ」とも述べた。
再開発の計画を巡っては、区は21年に野村不動産などの事業者と、事業推進の協定を締結。この協定に基づき、事業者と協議して計画を進めてきた。
当初の計画では、高層棟にオフィスやマンション、隣接する低層棟にホテルや最大7000人を収容できるホールが入る予定だった。だが、事業費が上昇し続け、当初の1810億円から24年9月には3500億円を上回る見通しが判明した。
酒井直人区長は「一度立ち止まることになるが、多くの区民の理解を得ながら、将来にわたって区民が誇りを持ち続けるものとなるよう引き続き取り組む」とのコメントを発表した。【小林遥】