
JR西日本には、10日で全線開業50年となった山陽新幹線の検査・修繕を行う博多総合車両所(福岡県那珂川市)と博多駅(福岡市)をつなぐ回送線を旅客線化した「博多南線」がある。近隣住民の通勤や通学を支え、当初は年約4500人だった利用者が3・4倍(2023年度)に増加している。
JR西によると、博多南線は福岡市近郊の福岡県春日市や当時の那珂川町(現・那珂川市)などの要望を受け1990年4月に開業した。春日、那珂川にまたがる計約33万平方メートルに及ぶ博多総合車両所の一角に博多南駅(春日市)があり、博多駅まで全長8・5キロを最高時速120キロ、最速8分で結ぶ。8両編成の車両はグリーン席を除き全席自由で運賃は片道330円。
開業当初の90年度は1日上下32本の運行で平均4546人が乗降。徐々に利用者も増え、2023年度は1日上下56本の運行で平均1万5594人が乗降している。
那珂川市では唯一の鉄道路線で、多くの市民が通勤や通学に使う。市の担当者は「博多南線の開業で周辺にビルや商店などがオープンし、徐々に人口も増加し、市制移行にもつながった」と話す。
春日市の担当者は、「市東側のJR九州や西鉄(西日本鉄道)の駅に加え、西側の鉄道駅になり、街の魅力向上につながっている。23年には車両所の近くの公園の一部を『新幹線の見える丘』として供用を始め、市を訪問する資源の一つになった」と説明する。
九州経済調査協会事業開発部研究主査の渡辺隼矢さん(地域経済)は「福岡都市圏の人口は2035~40年くらいまで増加が見込まれ、都市圏全体の交通整備は課題になっている。既存のインフラを活用して郊外と都心を短時間で結ぶ博多南線の役割は大きい」と指摘した。【下原知広】