
全国高校駅伝の男子で5度優勝し、2024年は準優勝した大牟田高(福岡県大牟田市)で、駅伝部員の9割超が、4月から鳥取城北高(鳥取市)へ転校することが判明した。大牟田で今年度ヘッドコーチ(HC)を務めた赤池健氏(52)の処遇を巡る学校側への反発が背景にあり、部員と保護者は赤池氏の転職先となる鳥取城北での競技継続を選択した。
赤池氏は大牟田で監督を務めていた23年3月、部員への体罰が発覚して退職した。だが、継続を望む当時の部員や保護者の声を受け、研修を経て部活動指導員で現場復帰。実質的な監督となるHCとして臨んだ24年12月の全国高校駅伝では、選手たちが最終区まで優勝を争う劇的なレース展開で準優勝した。
複数の関係者によると、学校側が24年11月、新年度の指導体制として、同校OBで現トヨタ自動車九州HCの磯松大輔氏(51)を新監督に迎え、赤池氏をサポート役とする方針を関係者に伝達。事実上の降格で、保護者は「子供ファーストになっていない」などと部員と共に学校側へ撤回を再三求めたが、学校側の方針は変わらなかった。赤池氏は25年3月末で退職し、4月から鳥取城北の教員として勤務する。
全国高校総体と全国高校駅伝の実施要項では、転校後6カ月未満の選手は天災などの特別の理由を除いて出場を認めていない。こうした制約の中、部員と保護者はそれぞれ話し合い、1、2年生の部員19人中18人が鳥取城北への転校を決断。1人は夏の総体出場を目指し大牟田に残るという。また4月に大牟田で入部予定だった15人の大半が鳥取城北に進学先を変更する。
取材に対し、大牟田の荒木信一副校長は、部員の大半から転学願が出ていることを認めた上で「気持ちよく転学していく子は一人もいない。申し訳ない気持ちでいっぱい」と述べた。一方、赤池氏は「転校する生徒も鳥取城北の生徒もきちんと育てるのが自分の役目であり、一生懸命やりたい」と話した。【長岡健太郎、降旗英峰】