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クマが人の生活圏に出没するケースが増加していることを受け、政府は21日、市街地での猟銃使用の条件を緩和する鳥獣保護管理法改正案を閣議決定した。人身被害の恐れがある場合、市町村長の権限で猟銃使用が可能になる。今国会に改正案を提出し、今秋までの施行を目指す。
現行の鳥獣保護管理法では、住宅地や公共施設周辺などで猟銃が使用できるのは、警察官が警察官職務執行法に基づいて命じた場合などに限られている。改正案では、クマなどを「危険鳥獣」と位置付け、人間に被害が及ぶ恐れがあるなど一定の条件を満たした場合、市町村長の権限で市街地などで自治体職員やハンターに猟銃を使用させることができる。私有地での使用も認める。
危険鳥獣は政令で指定する方針で、本州以南に生息するツキノワグマと北海道のヒグマ、イノシシの3種が想定されている。
市街地での猟銃使用にあたっては、自治体職員が道路の通行制限や避難指示を出して住民の安全を確保する。また、銃弾などで周辺の建物に被害が生じた場合は、市町村長が損失を補償する。補償の支払いに備えて自治体が保険に加入する場合、保険料は国から財政支援を受けられる。
環境省によると、2023年度はクマによる人身被害が全国で198件、人数は219人に上り、統計のある06年度以降で最多だった。今年度もクマが店舗や住宅に侵入するなど、人身被害が懸念されるケースが相次いでいる。【山口智】