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所得税がかかり始める「年収103万円の壁」の引き上げを巡って自民党が18日に示した案が不評だ。専門家からも「税制の理屈からするといびつで、正直気持ち悪い」との声も上がる。
自民案は、年収200万円以下の場合に、課税水準を従来方針の123万円から160万円に引き上げるというもの。低所得者層に、控除を上乗せする特例措置を講じて実現する。年収200万~500万円以下についても、控除を上乗せし、課税水準は136万円以上とする。
自民案が18日に報じられ始めると、SNS(ネット交流サービス)では「200万円以下」がトレンド入り。「200万円以下ってどんだけ対象になんのよ」「現役世代が潰れるか、自民党が潰れるかのチキンレースでも始めたん?」「ある程度頑張った人間が報われる世の中にすべきやろ」――など、現役世代を念頭に置いたとみられる人からの投稿が相次いだ。
自民案に反発した国民民主党の玉木雄一郎代表(役職停止中)もX(ツイッター)に投稿。年収200万円以下の対象者が所得税納税者全体の約5%に相当する約300万人だけだとして「物価高で困っているのは低所得者だけではありません。対象をもっと拡大すべきです」とした。制度の複雑さも指摘し、「所得制限という新たな『壁』を設けるのは避けるべき」だとした。
税制に詳しい専門家からも疑問の声が上がる。大和総研金融調査部の是枝俊悟主任研究員の試算によると、自民案による年間減税額(単身者または配偶者控除のない共働き世帯)は年収200万円で年2万4000円だが、年収300万円では減税額は年1万円になる。
年収200万円・300万円の場合、従来方針で年5000円と試算されていた減税額は拡大する。是枝氏は「所得の低い人ほど物価上昇の影響を受けているため、減税額を低所得者に集中させるという面では正しいとは言える」と一定の理解は示す。だが、「年収が200万円を超えると減税額が減って、税負担が1万円程度増えるのはいびつだ。税制の理屈としては無理をしていると言わざるをえない」と指摘する。【杉山雄飛】