
4月に区制100周年を迎える大阪市西成区は14日、地元出身の俳優、赤井英和さん(65)を記念アンバサダーに任命した。26年3月末まで、さまざまなイベントに参加するなどで地域を盛り上げる。
西成区は大大阪時代と呼ばれた1925年、それまでの西成郡が大阪市に編入される際、分割される形で西淀川区、東淀川区とともに設置された。
赤井さんは同区出身の元プロボクサーで、引退後は俳優やタレントとして活躍している。仕事の多い東京に拠点を置くが、今でも区内には同級生が多くいて、月1回以上行き来している。「地元で税金を払いたい」との思いから毎年、西成税務署で確定申告をするほど愛着を持ち続けている。西成を歩けば、地元住民からは「チャンピオン」と声を掛けられるという。
この日の就任式で、赤井さんが生まれ育ったまちの思い出を語る場面もあった。小学生の時、1970年の大阪万博が始まる前は市内も建築ラッシュに沸き、特に西成には全国から多くの労働者が集まり、元気だったと振り返る。当時の実家の前で暴動が発生し、労働者と機動隊が衝突する様子も目の当たりにした。
そういった歴史がある一方で、赤井さんは「西成区は人と人の距離が近い、情のあるまち」と表現する。赤井さんが大学生の時、祖母が亡くなり実家で葬儀があった。すると、祖母がいつもあいさつしていたニッカポッカに地下足袋姿の労働者が訪れて、10円玉を置いて合掌していった。そんな様子が印象深いという。
赤井さんは「西成区をもっと全国の人に知ってもらい、住みたいと思ってもらえるようにしたい」と意気込んでいる。【長沼辰哉】