
ロシアが全面侵攻を続けるウクライナに対し、最大の支援国である米国のトランプ政権が「ディール」(取引)を持ちかける姿勢を示している。軍事支援の継続と引き換えに求めるのは、ウクライナに埋蔵されているとされるレアアース(希土類)だ。一体どんな物質で、取引にはどれほどの実現性があるのか。
日本の独立行政法人、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)金属企画部の原田武調査課長に話を聞いた。
かつては中国の寡占状態
流通量の少ない希少な鉱物資源はレアメタル(希少金属)と呼ばれ、その中でも性質の似た17の元素がレアアースと定義される。レアアースの中では、電気自動車(EV)に使用される磁石の原料となるネオジムが有名だ。
レアアースの生産では従来、中国の寡占状態が続いていた。だが、原田さんによると、最近はオーストラリアや米国でも産出されるようになり、中国が世界市場を独占するような状態は解消されつつあるという。
では、ウクライナはどうか。トランプ大統領ら米政権からの発信について、原田さんは「ウクライナでレアアースがとれるとは初耳だった」と話す。ただ、レアアースが眠る場所は世界中に点在すると言われているという。
2022年のロシアの全面侵攻前、ウクライナではチタン鉱石が採掘され、それを加工した「スポンジチタン」が生産されていた。チタンはレアアースではないがレアメタルの一種だ。飛行機の機体やゴルフクラブなどに使用される軽金属として知られる。
チタンの精製は、電力を大量に必要とするという。ウクライナでは、ロシアの攻撃でインフラ施設が損壊し、電力も不足している。こうした中では、チタンの精製は困難になっていると推測される。
トランプ氏は、ウクライナには「非常に価値のあるレアアースがある」と前のめりな姿勢を示す。だが、実態より期待が先行している面は否めないようだ。【畠山哲郎】