
群馬県桐生市で生活保護費の支給を担当する福祉課の職員が、2022年から23年ごろにかけ、受給希望者を支援する別の行政機関の職員に対し、声高に怒鳴ったり、相談申請への同席を拒否したりするなどの不適切な言動を繰り返していたことが明らかになった。不適切な言動を受けた職員らは「他の自治体では、このような扱いは受けたことがない。とても当惑した」と証言している。
生活保護の受給希望者を支援していたのは、群馬県地域生活定着支援センター(前橋市)。刑務所を出所した高齢者や障害者らの福祉サービス利用を手助けするため、厚生労働省が全国に設置し、各都道府県から委託を受けた社会福祉法人などが運営する組織だ。
センターによると、利用者の1人が生活保護を申請する際に職員が付き添おうとすると、福祉課に断られた。センターが県の担当課に「同席は認められる」と確認し、ようやく同席できた。センターの担当者は「他の自治体で同席が拒否されることはない。とても当惑した」と話す。
別のケースでは、利用者の生活支援について、利用者の親と関わっていた市長寿支援課とセンターが連携し、救護施設入所の可能性を相談。すると後日、福祉課からセンターに電話があり、福祉課に断りなく話を進めたとして「それを決めるのは私たちだ」「あんたたちとはしゃべれない」と怒鳴りつけられた。長寿支援課との連携も阻害されたという。
センターの職員の中には、福祉課の強い言動を受けて「桐生市にはあまり行きたくない」と口にする人もいたという。
センターの担当者は「何が生活保護の受給希望者のためになるのか、一緒に考えようという姿勢が見られなかった」と振り返る。市の生活保護を巡る一連の問題が明るみに出た24年度以降、福祉課の不適切な言動もなくなったという。
センターの職員に対する不適切な言動は、市の生活保護の不適切運用を検証する第三者委員会が把握。昨年12月25日、委員がセンターの職員に聞き取り調査を行った。
第三者委員会の委員長を務める吉野晶弁護士は「福祉サービスは(他の機関と)それぞれの専門性をいかしつつ、いろいろな見地で関わる。聞き取りをして『本当にそんなことあるのですか』と受け止めた。非常に残念」と述べた。【遠山和彦】