
米国のヘグセス国防長官は12日、ロシアの侵攻を受けるウクライナが、南部クリミア半島の併合をロシアに強行された2014年以前の状態まで領土を回復することは「非現実的だ」と述べた。ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟も否定した。ブリュッセルであったウクライナ防衛の関係国会合で述べた。
ロイター通信によると、ヘグセス氏は、ウクライナが14年に親露派勢力に占領された東部ドンバス地方やクリミア半島を取り戻そうとすることは「戦争を長引かせるだけだ」と主張した。
ウクライナのゼレンスキー大統領は停戦に向け、ロシアの再侵攻を防ぐため、欧米による安全保障の確保を求めている。ヘグセス氏は、安全保障は「欧州または欧州以外の軍隊によって支持されなければならない」とした上で「米軍はウクライナに派遣されないだろう」と話した。
ヘグセス氏から武器供与などウクライナへの追加支援の発表はなかった。ウクライナメディアによると、会合に出席したウクライナのウメロフ国防相はヘグセス氏と会談したが、内容を明らかにしなかった。
この会合は22年のロシアによる侵攻開始以降、バイデン米政権が25回にわたり主催してきた。今回は英国が主催し、第2次トランプ米政権の発足後初の開催となった。開催地もドイツ西部ラムシュタインの米軍基地から変更された。
一方、ゼレンスキー氏は12日、ベッセント米財務長官とキーウ(キエフ)で会談し、トランプ大統領が支援継続の条件として求めるウクライナのレアアース(希土類)提供について協議した。
ベッセント氏は会談後、提供で合意すれば、ウクライナはロシアとの停戦後、「安全の盾」で守られるだろうと述べた。ゼレンスキー氏も、14日にドイツで始まる「ミュンヘン安全保障会議」で合意に達したいとの期待を語った。【ベルリン五十嵐朋子】