米国のトランプ大統領は27日深夜、出生時の性と性自認が一致しないトランスジェンダーの人々を米軍から排除することを念頭に、入隊時の医療基準などの変更を国防長官に指示する大統領令に署名した。併せて、米軍からDEI(多様性、公平性、包括性)推進の取り組みを排除する措置を取るよう求める大統領令も出した。
大統領令に署名
トランプ氏は就任直後の20日、連邦政府として認める性別は変更不可能な男性と女性の二つだけであるとする大統領令に署名している。軍も対象とした形だ。
トランスジェンダーに関する大統領令では、目的として、米軍が「急進的なジェンダーイデオロギーに悩まされている」ことなどを挙げた。「個人の性別とは異なる虚偽の『性自認』を表明することは、軍務に必要な厳格な基準を満たさない」と指摘。国防長官に対し、入隊や任命などに際しての医療基準を60日以内に変更するよう指示した。
また、軍において特別な業務上の必要がない限り、男女それぞれが異性用の寝室や更衣室、入浴施設を使用したり共有したりすることは認めないとした。
トランスジェンダーの米軍勤務は、2016年にオバマ大統領(当時)が受け入れを認めた。しかし、トランプ氏は1期目の17年、軍事運用面での「混乱」をもたらすなどとして入隊を拒否する考えを示し、大幅に制限した。21年にバイデン大統領(当時)が制限を撤廃し、入隊を認める大統領令に署名したが、トランプ氏が今回、再び事実上の「禁止令」を出した。
一方、トランプ氏は今回、米軍からのDEI推進排除を求める大統領令で「軍において、性別、人種、民族、肌の色、信条を理由に、個人または集団が優遇されたり、不利益を被ったりしてはならない」と指摘した。近年のDEI推進プログラムや人種、性別による優先施策は「(軍の)結束力を損なわせ、戦闘能力を低下させる」などと厳しく批判した。
具体的には、国防長官と沿岸警備隊を所管する国土安全保障長官に対し、両組織内の全てのDEI事務局を廃止するよう指示した。国防長官には、DEI推進のために実施されてきた措置に関する内部調査なども義務づけた。
このほか、国防長官らに、新型コロナウイルスの感染拡大期にワクチン接種を拒否したとして除隊となった兵士らの復職を認める大統領令も出した。21年に当時の国防長官が接種を義務化したことについて「不公平で、全く不必要な負担だった」とし、拒否した兵士の多くを不当に除隊させたと批判した。【ワシントン西田進一郎】