
トランプ米政権は、連邦政府機関でDEI(多様性・公平性・包括性)を担当するすべての職員を、22日夕までに有給扱いの休職とするよう命じた。配置換えや解雇を前提とした措置とみられ、各機関はDEIに関する研修などを中止するほか、担当部局のウェブサイトやソーシャルメディアのアカウントを削除する。教育機関や民間企業にもDEIの取り組みの中止を促す。
トランプ大統領はDEIを「違法な差別や優遇」につながると主張し、徹底的に排除する構えだ。休職の対象人数は明らかになっていない。人権団体などがDEI施策を廃止する大統領令の無効を求めて訴訟を起こす可能性がある。
すべての人が公正に活躍する機会が与えられる環境作りを目指し、日本でもDEI推進の看板を掲げる企業が急速に増えている。先行した米国では多数派に対する「逆差別」との反動も生み、共和党が優勢な一部の州では、トランプ氏の就任前からDEI推進に規制をかける動きも広がっていた。マクドナルドや小売り最大手ウォルマート、IT大手メタなど民間にも従来の推進方針を変更する動きが出ている。
トランプ氏は20日の就任演説で、「人種を意識しない、実力主義の社会を作る」と述べた。20日に署名した大統領令では、政府機関の雇用や人事において、いかなる場合でもDEIを考慮してはならないとした。
その上で、各省庁に対し、DEIと呼ぶか否かにかかわらず「違法な差別や優遇」につながる部局や担当職を廃止するよう命じた。気候変動や環境問題における不公正な影響の是正を追求する「環境正義」を掲げた部局も対象となる。
また、トランプ氏は21日に署名した別の大統領令では、民間企業にもDEI推進の中止を促すよう関係省庁に指示。さらに、ジョンソン元大統領(民主党)が公民権運動さなかの1965年に、連邦政府職員の雇用の平等と、公共事業でのマイノリティー(人種的少数派)の積極雇用を求めた大統領令を撤回した。【ワシントン八田浩輔】