ブリンケン米国務長官は13日、ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部で記者団の取材に応じ、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援について、来年1月の米政権交代までに「バイデン政権は使える資金の全てを使う」と語った。北朝鮮による対露支援の派兵に関しては「戦況に応じ、ウクライナに必要なものを支援する」と述べた。
ブリンケン氏はNATOの意思決定機関である北大西洋理事会に出席するため現地を訪問した。
NATO加盟国の間では、ウクライナ支援や欧州との防衛協力に消極的なトランプ前米大統領が再選されたことへの懸念がある。特にウクライナに関して、戦況悪化や、トランプ氏主導でロシアに有利な条件での和平交渉が開始されることが憂慮されている。
こうした点を踏まえて、ブリンケン氏は「私たち(NATO加盟国)が協力しているのは、来年に向けて、ウクライナの立場を可能な限り強めることだ」と述べ、対空兵器の供与など米国として最大限の支援を約束した。同時に、欧州のNATO加盟国や日本など「約50カ国のウクライナ支援国が支援を拡大することが重要になる」と訴えた。
北朝鮮の派兵問題については、見返りとして懸念されるロシアから北朝鮮へのミサイル技術の供与が、欧州だけでなくアジア太平洋地域の脅威になるとの見方に言及。韓国や日本などパートナー国との協力強化を訴えた。ウクライナに対しては、戦況に応じて最大限の支援をすると述べた。
NATO加盟国の間では、トランプ次期政権の発足で核兵器大国である米国の関与が低下し、NATOの核抑止力が大きく低下する懸念も出ている。
ブリンケン氏は「戦争を防ぐ最良の方法は抑止力だ。私たちはこの並外れた同盟に投資し続けなければならない」と述べ、一部加盟国への攻撃をNATO全体への攻撃とみなして集団で防衛することを定めた北大西洋条約第5条の重要性を強調した。【ブリュッセル宮川裕章】